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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

婚約者から「婚約破棄? できるものならやってみろ!」と言われたのであなたを信じて婚約を破棄します

作者: コーヒーまめ
掲載日:2021/07/22

「ふん、相変わらず陰気臭い顔をしてるな。そのつらを見てるとどんなに上等な紅茶でも不味くなる」


 白いテーブルクロスが敷かれたテーブルの向かいにふんぞり返って座り明後日の方を向きながらそう言って紅茶を口にするのはテオドアール子爵家の長男のマリウス様。


 私、マリア・フォルトゥナの……婚約者だ。


「申し訳、ございません……」


 私の口からは謝罪の言葉しか出すことができない。


 私は正直この男が大っ嫌いだ。


 金色の髪をした顔はそこそこ整ってはいるがその目は細く、人を見下すようなその瞳は青い色をしている。


 本音を言えばこの場で平手打ちをして紅茶をひっかけて帰りたいくらいだ。


 しかし、それはできない。


 その理由はこの婚約の意味にある。



 我がフォルトゥナ家は伯爵の地位を賜っている。


 他にも伯爵家は多くあれどその中でも我が家は古くからの歴史と伝統のある、いわゆる名家と言われる家柄だ。


 しかし、ここ数年の間に領地では飢饉が発生。


 我が領地の領民を助けるため伯爵家の蓄えを回すもそれでは足りず、領民の生活と領地経営のための資金を調達する必要があった。


 そんなときに我が家に声を掛けてきたのが新興の貴族であるテオドアール家だ。


 マリウス様の御父上である現子爵家当主は元々は平民。


 商売が上手くいきそれで得た潤沢な資金を使ってテオドアール子爵家に入ることになった。


 手続上は老夫婦の養子となることでその貴族の血統を文字通り買い取ったのだ。


 そのテオドアール新子爵となったマリウス様の御父上は今度は自分たちの地位の向上を目指すことにしたようだ。


 成金が金で爵位を買った。


 粗忽な成り上がり者。


 テオドアール家に向けられる言葉はそんな嘲笑であった。


 そんな折に目を付けられたのがそこまで爵位は高くない家柄ながらその歴史と伝統においては王国内で一目置かれる我が伯爵家だった。


 テオドアール家は我が家の窮状に手を差し伸べ、資金の援助をする見返りとして私を、私を長男である家を継ぐマリウス様との婚約を求めた。


 まごうことなき政略結婚だった。



 私のお父様は随分とお悩みになった。


 テオドアール家は王国貴族の中で当然のことながらすこぶる評判が悪い。


 元は平民であり貴族のなんたるかも理解していないだろう。


 しかも彼らが欲しいのは私個人ではなく、歴史あるフォルトゥナ伯爵家の御令嬢であるというその肩書のみ。


 その肩書のある者を妻として迎えたというその事実こそが必要なのだ。


 結婚したとしてもどんな仕打ちを受けるかわかったものではない。


 お父様は最後の最後まで他に我が家に資金を援助してくれる家がないかを探された。


 しかし、飢饉が起こったのは我が伯爵家だけではなく、他の家のご領地も我が家ほどではないもののそれなりの影響を受けていた。


 誰もが自分たちのことを何とかするだけで精いっぱいという状況だった。


 そんなお父様を見て私は申し出た。


「我がフォルトゥナ家は領民あってのもの。これまで私が労せずしていい暮らしができていたのも領民たちのお蔭です。それならば今度は私がこの身を捧げることで御恩返しをしたいと存じます」


「すまない。必ず領地を立て直す、それまで我慢してくれ……」


 物心ついたときから我が伯爵家の当主として私の前ではいつも難しい顔しかしていなかったお父様は私を抱きしめられてそう言って涙を流されました。


 私の肩にはフォルトゥナ家と領民たちの未来がかかっているのです。


 ですからどんなに辛くてもぐっと耐えるしかありません。


「父上に言われて定期的にこうして会う機会を設けているが今日はもうこれでいいだろう。早く帰れ」


「……では失礼致します」


 私はマリウス様にシッシと手を振られ屈辱の中でお暇することになりました。




「うっ、うう~」


 従者が操る馬車に入るとそこは一人の場所。


 悔しくて腹立たしくて情けなくて。


 私は御者に聞こえないよう声を押し殺しながら一人静かに涙を流しました。







 数日後。


 私は第二王女殿下のお茶会に出席しました。


 我が伯爵家は伯爵家の中でも家格だけは高く、特に王家とは昔から関係が良好でした。そういったことから幼少期からよく王城からお呼ばれすることがありました。


 第二王女殿下は私よりも2つ年上で昔から私の御姉様的な存在でした。


 多少ふっくらと丸いお顔をされた殿下は美しい金色の髪を縦ロールに豪華に巻かれた華やかな装いをしていらっしゃいます。


「マリア、久しぶりね。ご機嫌いかがかしら」


「殿下、ご無沙汰しております。元気にしております」


 久しぶりにお会いした第二王女殿下にそう御挨拶してお茶会が始まった。


 このお茶会、出席したのは伯爵家では我が家だけ。


 他は公爵家や侯爵家といった爵位の高い家の方ばかりでした。


 たまたまと言っていいのか、この日は皆様既にご結婚されているご婦人ばかりで御年齢も私よりも上の方ばかりでした。


 皆様以前からの既知の方々で私は昔から妹の様に扱われていました。そんな皆様が私に「辛いことはないか」と優しくおっしゃいましたので私はついうっかり泣き言を漏らしてしまいました。



「許せませんわね……」


 そうおっしゃいましたのは四大公爵家のうちの一つに嫁がれました元侯爵令嬢のイザベラ様でした。


 我が国でも貴族同士の政略結婚というものは勿論ございます。


 その中でも本当に形だけの『白い結婚』ということもなくはありません。


 しかし、それにはそれをするだけの作法というものがあるそうです。


 その場合は、普通に嫁として迎える以上の待遇をその方個人にすることが貴族としての暗黙のルールとなっているとのことでした。それができないのであれば貴族を名乗る資格はないとまでおっしゃいました。


 皆様のお気持ちはありがたいものでしたがだからといって根本的な解決に至るはずもありません。


 ちょうど話題が変わるときに私はお花摘みのため席を立ちました。



 幼いころから何度も来ている王城ですので迷うことなく目的を済ませて再びお茶会の開かれている中庭へと戻る途中、一人の男性の方をお見かけしました。


 背はスラリと高く、色白で穏やかな目つきといいますか瞳をした赤茶色の髪の方でした。


 あちらへ行ったりこちらへ行ったりとせわしなく歩き回られていらっしゃいますがひょっとして迷われたのでしょうか。


 この王城はいざというときに備えて、以前、とある国王陛下の御世に迷路のように入り組んだ作りに改装されたと聞いています。初見では案内人なしでは迷ってしまうと言われていますので恐らくは王城に不慣れな方なのでしょう。


 賊の可能性がなきにしも非ず、ですがその身なりからかなり高い地位のお方と思われましたのでその可能性はないだろうとお声を掛けることに致しました。


「失礼致します。もしかして迷われましたか?」


「お恥ずかしい。その通り迷いまし……て」


「?」


 目の前の男性はそうおっしゃって一瞬驚いた表情を浮かべられましたが、すぐに表情を元に戻されました。


 初めて。


 初めてお会いする方ですよね?


 この国のある程度の貴族の方でしたら顔と名前は一致しますが、この方は私の頭の中にあるリストには該当がありません。


 とすれば、私のリスト外の新興貴族の方かはたまた高位貴族の従者の方という線もあるでしょうか。


 しかし、そうは思いながらもこの方のお顔立ちに既視感を覚えるのも確かなのです。



(どこかでお会いしたことがあるかしら?)



 そうは思いながらも早く戻らないとという気持ちもあり、どこに行きたいのかを尋ねてご案内することに致しました。


「おお、こんなところにいらっしゃいましたか! お探ししましたぞ」


 そう言って廊下の先から駆け寄って来られたのは……王太子殿下!?


 私は慌てて臣下としての礼をとると迷い人の彼を王太子殿下に引き渡しまして、私は急いでその場を離れました。


 後ろで「御礼を」という声が聞こえましたがお茶会の皆様を待たせていましたので気にする余裕はありませんでした。








 第二王女殿下のお茶会の日から3か月後。 


 私は王太子殿下の誕生パーティーに招待されました。


 招待状には婚約者のマリウス様と一緒にと書かれていてそのマリウス様にも同様の招待状が送られているようでした。


「ふん、貴族というのは面倒なものだな。パーティー一つのためにこんな面倒を強いられるとは」


 ぶつくさと文句を言う婚約者とともに馬車で王城のホールへと向かいます。


 パーティーが始まるとまずは主宰者である王太子殿下にご挨拶に伺います。


 挨拶が済むとダンスの時間です。


 我が国のパーティーの習慣では、最初のダンスはエスコートしされた者同士、パートナーが務めるということになっています。


「おいっ、俺に合わせろ、この下手くそっ!」


「そうはおっしゃいましても……」


 マリウス様のダンスは正直に言いましてまったく体のなっていないものでした。


 元々生まれも育ちも平民で、ダンスの経験は乏しく、多少はどなたかに習われたようではありましたがそれでも拙いものでした。


 私も何とか合わせようとしますが、下手な御仁がさらに自分勝手にするものですからどうにも収拾がつきません。


「いたっ!」


 マリウス様に足を踏まれ思わず声が出てしまいました。


 そうして私は体勢を大きく崩してしまい、そのままホールに尻もちをついてしまいました。


 その様子を周りの人たちが見ています。


「何をしてるんだっ! この愚図っ、俺に恥を掻かせやがって!」


 マリウス様が倒れた私に向かって手をあげようとされました。



――叩かれる!



 そう思って目を瞑ったそのとき、誰かが私とマリウス様との間に割って入られました。


「婦女子に手をあげるのは感心しないな」


 抑揚のないゾクリとする声でした。


 再び目を開いた私の目に飛び込んできたのは先日王城でお会いした迷い人様がマリウス様の手を掴まれた光景でした。


「何だお前はっ!」


「何だとはご挨拶だな。畏れ多くも王太子殿下の晴れのパーティーの席での下賤な振る舞い。貴族を名乗るのも烏滸がましいと思うが?」


「何だとっ!」


「レディ、お手を」


 迷い人様は憤るマリウス様の手を離すと彼を無視して私に手を差し出されました。


 私はその手をとって立ち上がります。


「レディ、この者はあなたの婚約者としてふさわしくありません。せっかくの機会です。この場で婚約の破棄をなさってはいかがですか?」


 その言葉に私は思わず頷きそうになりました。


 しかし、我が家、我が領民のことを思えば自分の身かわいさの一時の感情でそれらを犠牲にすることはできません。


「ははっ! 婚約破棄? できるものならやってみろ! そんなことができるものかっ! もし破棄をするというのであればこれまでお前の家に貸した金3000万ゴルド、耳を揃えて返してもらうぞっ!」


 その言葉に、悔しさにぎりっと奥歯が軋む音がしました。


「レディ、その程度の端金、わたしがどうとでも致しましょう」


 迷い人様が私の目を見てそうおっしゃいました。


 やはりこの目、どこかで……


「わたしを信じて下さい」


 畳み掛けるようにおっしゃいました。


 いつ会ったのか


 いつ見たのかはまったく思い出せない


 しかし、この目は、この方は信じられる。


 理屈もなにもない。


 ただ私は自分の直感を信じることにしたのです。


「この売女! お前は黙って俺に従っていればいいんだ! 面倒を掛けさせるなっ!」


 名誉を大事にする貴族の娘として育てられました私の堪忍袋の緒はとっくのとうに切れております。


 迷い人様、私はあなたを信じます。


 私はキッと目の前の婚約者面する男を見据えて言いました。


 自分でも驚くほど平坦で抑揚のない声でした。


「マリウス・テオドアール。到底貴族のものとは思えないあなたの振る舞いの数々は私が婚姻を結ぶに値しません。私、マリア・フォルトゥナはあなたとの婚約を今日この場で破棄します」


「なっ!?」


 まさか本当に私がそんなことを言い出すとは思ってもいなかったのだろう。


 マリウス様、いえ、マリウスは鳩が豆鉄砲を食らったかのように固まってしまいました。


「ははっ、ならお前の家は終わりだっ! 貸した金は耳を揃えて返してもらうっ! 今後の資金援助もなしだっ!」


「ああ、それは問題ないよ」


 その言葉を引き取られたのは迷い人様でした。


「たかが3000万くらいわたしのポケットマネーで十分だ。ああ、請求はサイルード王国の王太子であるわたし宛てにするがいい」


「なっ!?」


 サイルード王国は我が国の隣にある同盟国です。


 我が国と同等かそれ以上に栄えている国と聞き及んでいますがまさか迷い人様がその国の王太子殿下だったなんて。


「わたしの誕生パーティーに随分舐めたまねをしてくれるじゃないか下郎。覚悟はできているんだろうな?」


 いつの間にか王太子殿下が迷い人様の隣まで来られてこめかみに青筋を立てていらっしゃいます。顔は笑顔なのに目が笑っていないそのご表情は私に向けられていないにも拘らず恐怖を覚えました。


「ああ、そうだ。お前の家のことは調べさせてもらった。我が国とも取引があるようだが違法に我が国の品を国外に持ち出していることが判明した。ペナルティとして6000万ゴルドを課税するから耳を揃えて支払えよ」


「なっ、なんだとっ! でたらめだっ!」


 マリウスは迷い人様にそう食って掛かられますがその言葉に最早勢いはありません。


 するとマリウスは突然出口に向かって走り出しました。



「あら、パーティーの途中にどちらへ行かれるのかしら」


 マリウスの走るその先には先のお茶会でご一緒した公爵家に嫁がれたイザベラ様とその旦那様のお姿がありました。本日のパーティーには何か御用があったのか遅れて参加されたようで下座にいらっしゃったようです。


「ええいっ、どけっ!」


 マリウスがお二人に突っ込もうとしたそのとき、お二人の影から護衛の方でしょうか。騎士様が現れてあっという間にマリウスを床に叩き伏せてしまいました。


「皆様、この様な場で恐縮ですが法務卿を仰せつかっております我が家からご報告がございます。調査の結果、この男の父、現テオドアール子爵は違法な取引による資金形成、そしてその資金を元に違法に爵位を簒奪したことが判明致しました。この結果は既に国王陛下にも報告済みであり陛下のご裁可の元、テオドアール子爵、いえ、テオドアール子爵を騙っていた者を先ほど捕縛致しました」


 会場の皆様からは『お~っ』というどよめきが上がりました。


「つまりこの男は?」


「ええ、最早貴族ではございません。ただの平民、いえ、王太子殿下に無礼を働いた犯罪者ですわね」


 近くにいらっしゃった出席者からの質問にイザベラ様は淀みなく答えられました。


「この者を牢に引っ立てろ!」


 王太子殿下の命令で警備に当たっていた衛兵が既に制圧されて床に伏しているマリウスを縄で縛るとどこかへと連れて行ってしまいました。


 こうしてマリウスは華やかな表舞台から退場することになったのです。


 その後マリウスは父親ともども犯罪奴隷に落とされ鉱山に送られたとお聞き致しました。




 王太子殿下の誕生日パーティーの2日後。


 私は再び第二王女殿下に王城に呼ばれました。


「マリア、今回は大変でしたわね」


「ありがとうございます。大変は大変でしたが今はもうスッキリとしています」


 先日とは違い、今日は二人でテーブルを囲んでのお話だ。


 結局、我が家がテオドアール家から借りていた3000万ゴルドは正式にサイルード王国が肩代わりすることになった。もっとも、反対にテオドアール家は6000万ゴルドを課税されて相殺処理の結果、資産を差し押さえられることになったそうだ。


 この手続には我が国の王家も当然ながら関与していて形の上では我が家は王家からお金を立て替えてもらっていることになっている。


「今日は貴女に会っていただきたい方がいるの」


「? どなたでしょうか?」


 私が首を傾げているとやって来られたのは迷い人様改めサイルード王国王太子殿下でした。


「先日は助けていただきましてありがとうございました。我が家の債務は必ずご返済致しますのでしばらくお待ちいただければと」


 私は慌てて席から立ち上がり貴族としての礼をとると先日の御礼とお願いを申し上げました。


「礼には及びません。上に立つ者として当然のことをしたまでです」


「ですが殿下」


「殿下ではなくリュークとお呼び下さい。いえ、リューと呼んでいただいた方がわたしとしては嬉しいのですが」


「リュー?」


 その言葉を聞いて頭の奥底にあった古い記憶がじわじわと蘇ってきます。

 たしか私がまだ幼いときにこの王城でそう呼んでいた男の子と会ったような気が。

 この赤茶色の髪に穏やかな瞳、そして『リュー』という名前。


「あっ、あー! ひょっとして『泣き虫リュー』?」


「……泣き虫はさすがにもう止めていただきたいですね」


 リューク殿下はそう言って苦笑されました。


 思い出しました思い出しました。


 そう、子供のとき、一時期この王城でよく遊んでいた男の子がいたのです。


 その頃は私も爵位や肩書というものが関係なくて単に自分は自分でしかなかった懐かしい時代。


 直ぐに会うこともなくなり私の中ではとっくに忘れていた方でした。


「えーっと、その節はどうも?」


「いえいえ、滅相もない」


 あの頃、リューク殿下はなよなよおどおどしてはっきりしない子供だった。


 そんな彼に対して私はかなり上から目線でいろいろ言った気がする。


 恥ずかしい。


「あれからわたしも目が覚め、今やこうして王太子になることができました。これもすべてあなたのおかげです」


「ええっと、私、何かしましたっけ?」


「ええ、忘れていません。わたしが後継者争いに負けそうでこのままでは家を継げないかもしれないという話をしたときに『自分が上に立つ方が領民のためになると思えば立て、その相手が上に立てば領民のためにならないと思えば一命を賭してその者を退けよ』と言われました。私は自分のことしか考えていなかった。目から鱗が落ちる思いでしたよ」


「そっ、そうでしたか……」


 あー、その言葉はお父さまがどこかで言っていた言葉だと思う。


 幼い私はそれをそのまま殿下に偉そうに言ったのだろう。


「今のわたしがあるのは全てあなたのおかげです。ですからわたしは王太子となって是非あなたにお会いしたかった」


 そう言うとリューク殿下は私の前に跪かれました。


「あの時お会いしたときからあなたのことが好きでした。もしよろしければわたしと結婚していただけないでしょうか」


 いきなりの申し入れに私の心はパニックです。


 本当かしら。


 後からやっぱり冗談だった、とかはないでしょうか?


 私が困った顔をしているとリューク殿下は「あっ」という表情をなさいました。


「申し訳ありません。もし結婚をお断りになられても立て替えたお金を直ぐに返せとは言いませんし、今後必要となる資金についても融通致します。決してあの男と同じようなことは致しませんから」


「では……」




 〇 〇 〇 〇


【第三者視点】




「みなさん。そのときに彼女が返した答えはなんだったと思います?」


 今日も第二王女殿下のお茶会には大勢の方々が参加しておいでです。


 今話題になっているのはこの国の同盟国であるサイルード王国の王太子とこの度その方の妃となられたこの国のとある貴族の娘との馴れ初めでした。


「まあ、なにかしら? わたくしでしたら二つ返事でお受けしますのに」

「といいますか、それ以外のお返事があり得ますの?」


 御令嬢方は口々に同じようなことをおっしゃっています。


 その様子を満足そうに眺めておいでだった王女殿下はたっぷりと時間をかけてもったいぶって口を開きました。


「ふふっ、その時の彼女の答えは『まずはお友達から始めましょう』ですわ」


 その言葉に御令嬢方は『あらあら』『まあまあ』と思い思いのことをおっしゃいます。



 このときのマリア嬢の心情については様々な憶測が囁かれました。


 以前の婚約者が酷すぎて男性不信に陥っていたのではないか、とか。


 実はリューク殿下の御顔が好みではなったのではないか、とか。


 直ぐに結婚に頷けば、またお金目当てで娘を犠牲にしたとお父上が非難されかねないからではないか、とか。


 しかし、その後、文字通り友達から始められたお二人は少しずつ愛を育み、2年後にはとうとうご結婚されることとなりました。


 その間、サイルード王国から資金を借りたフォルティナ領はその資金を元に灌漑設備への投資、治水事業にと力を入れることになりました(勿論この資金はいったんはこの国の王家が借り受ける形をとり、この国の王家からフォルティナ領へと貸し付ける形がとられました)。



 さらにこの後、10年が経ち、この国だけでなく隣国を含む一帯を再び大飢饉が襲ったとき、農地や領地を改良していたフォルティナ領だけは空前絶後の大豊作となりました。


 フォルティナ領は領外及び娘が嫁いでいたサイルード王国に多くの作物を輸出し、高騰した相場により多額の利益を得ることができました。


 そしてそれまでに溜まっていた負債を全て完済することができました。


 それだけでなく、この国とサイルード王国の多くの民が飢えに苦しまずに済んだのですが、それはまた別のお話。

 初めましての方もお久しぶりの方も最後まで読んでいたきありがとうございました。

 

 婚約破棄ってされるもので、するものではないのかもしれませんがそれも一興と思っていただければと思います。


 いつも申し訳ありませんが自分の作品の良し悪しは自分ではわかりませんので、 ↓ の☆を★に変えて評価のほどお願い致します(★の数は今の気分でどうぞ。後で変更できます)。


 皆様からの評価が今後の作品作りのモチベーションになります。

「イマイチ、努力賞」の★1つでも構いませんのでご協力下さい。

 本作に限りませんが皆様のひと★(おし)で明日「小説家になろう」に投稿される作品の数がきっと変わります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 婚約者が成り上がりの品性無しかと思ったらそれ以前の話だった それならそれで詐欺師らしく立ち居振る舞い位はしっかりしとけよ、と リュークは精神的に姐さん女房をパートナーに上手くやっていくこと…
[一言] 読んでいてとてもスムーズに物語が、進んでいたと思います。長編も、期待してます。楽しみです。頑張ってください。
[一言] 面白かったです! マリアはいいお姉様方に恵まれましたね〜(笑) 有難う御座いました!
感想一覧
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