9-10 ルーラの部屋で
9ー10 ルーラの部屋で
ルーラは、その宿の特別室へと俺たちを導いた。
こんな部屋もあるんだな。
俺は、部屋の入り口でそのいかにも重厚な扉を見て思っていた。
ルーラは、扉を開けて中へと入っていく。
そこには、すでに俺とクロを除いた全員が揃っていた。
「メリッサ!」
キティが俺に駆け寄ってくる。
「もう、平気なの?」
「ああ」
俺が答えると、キティは、ホッと吐息をついた。
「よかった。あなた、ここに来る途中の馬車の中で死んだように眠ってしまって。クロ君が、クロ君って、聖獣だったんだね!その、クロ君が眠っちゃったあなたを離そうとしなくって、仕方がないからルーラさんがクロ君に状態異常の魔法をかけてクロ君を動けなくして、その隙にアルム先輩があなたを宿屋の部屋へと運んでくれたのよ」
キティは、いつになく饒舌だった。
「それで、その、服が汚れてたから、わたしとルーラさんで着替えさせたんだけど、その後は、またクロ君があなたを。今度は、ナノまで一緒になって、さ」
そうか。
俺は、ホッと胸を撫で下ろしていた。
俺を着替えさせたのは、 クロじゃなかったんだな。
「ありがとう、キティ」
俺は、キティが座ったソファの隣に腰を下ろした。
街道の宿場町の宿屋の部屋にしては豪奢な部屋の中には、俺やキティの他に、アル兄たちとラクアスや、ハインリヒたち、そして、見知らぬ白髪の大男までいた。
俺が胡散臭そうにその大男を見ていることに気づいたルーラが言った。
「紹介しよう。この国の第一騎士団の団長 ウィルヘルム・ゲイラーだ」
「初めまして、姫様」
騎士団長が手を差し出したので、俺は、その上に自分の手を置いた。団長は、俺の手をにそっと口づけた。
「あなたが、戦ってくれたおかげで、被害が最小限でくい止められました。ありがとうございます」
「いや、当然のことだし」
というか、戦わなきゃ死んでたしな。
俺は、団長に握られている手をそっと引き抜いて愛想笑いを浮かべて見せた。
「一応、王族だしな」
「では、挨拶もすんだことだし、今回の事件の顛末を話すとしようか」
名残惜しげな顔をしている団長をよそにルーラが、言った。