9-6 もしかして、ピンチですか?
9ー6 もしかして、ピンチですか?
「ふん。転移ゲートとはね。なるほど、どうやらあなたも年相応という訳ではなさそうね」
「どうかな」
俺は、近づいてくるアンデッドを睨み付けながら、女の方をうかがった。
シャラは、見事に妖艶な微笑みを浮かべた。
「お姫様のわりには、骨があるわね。あなたみたいな子がラクアス様のもとについたなら、これから先は、少しは楽しめそうね」
シャラは、そう言うと手を振り上げた。
「もし生きていたらラクアス様に伝えてね。あなたのお姉さまの体は、とっても役にたっているって」
はい?
俺がシャラに問おうとしたときには、シャラは、手を振り下ろしていた。
そして、それと同時にアンデッドたちが呻き声をあげながら飛びかかってきた。
俺は、迫ってくる無数のアンデッドたちを聖別された炎の矢で貫いた。
きりがない!
俺は、魔法の矢を放ちながら歯軋りした。
フェンリルの咆哮が聞こえて、ごうっと風が巻き起こる。
「ナノ!」
ナノは、俺を見て、わふっと鳴くと俺を咥えて背中へと放りあげた。
「メリッサ!」
キティとクロノが俺のことを受け止めた。
「大丈夫?メリッサ」
「キティ、クロノ、なんで、逃げなかった?」
2人は、俺の問いに答えた。
「逃げられないよ、友だちを置き去りにして」
キティが言うと、クロノも頷く。
俺は、大袈裟にため息をついて見せる。
まったく!
こいつら、いつも、ダメダメの癖に、こんなときだけ、カッコつけやがって。
「行くぞ!」
「「うん!」」
俺がナノにしがみつくと、ナノが駆け出した。
クロとアル兄たちは?
俺の視界の隅に光が走った。
あれは、雷撃の魔法だ!
「あっちだ!ナノ!」
俺は、ナノの耳に向かって叫んだ。ナノは、一声高く鳴いた。
「がぅっ!」
ナノが雷の走った方へと向かって走り出した。
だが。
ナノは、すぐに足を止めて立ち止まった。
ナノの足元に切り立った崖があった。
後ろから地響きのような声をあげながらアンデッドの群れが迫った来る。
俺の背後でキティが震えているのがわかった。
クロノも顔色がない。
もしかして、ピンチですか?