9-4 まさかのアンデッドですか？
９ー４ まさかのアンデッドですか？
地上についた俺たちをハインリヒたちが待っていた。
そこは、首都ダニンの玄関口と呼ばれる街 ウィンティーで主要な街道の始まる場所でもあった。
そこで俺たちは、ハインリヒたちが用意してくれていた馬車に乗って、アマータ湖を目指して出発した。
天候もよく、俺たちはみな、うきうきしていた。
街道沿いの町並みは、見事に整っていて、俺は、今更ばあちゃんの女王としての手腕を思い知っていた。
このガーランド公国は、魔法こそ後進国であったが、十分に国民は、満ち足りた暮らしを送っているようだったし、他国の侵略を免れるだけの武力もあった。
ミスリル鉱や魔石の鉱山が多くあり、それらの加工技術にも秀でているこの国は、比較的豊かな国であるといえる。
街を出るとき、見知らぬ女の子が俺に花束をくれた。
「姫様に」
「あ、ありがと」
俺は、ぎこちない笑顔を浮かべた。
そんな俺に女の子は、ニッコリと微笑んで言った。
「姫様、無事に帰ってきてくれてありがとう」
マジかよ。
俺は、嬉しくって、涙ぐみそうになってしまった。
この国の民は、みな、俺のことを喜んで受け入れてくれているようだった。
いくら、天魔王 ルーラの言うこととはいえ、少しも疑うことなく俺を暖かく迎え入れてくれたこの国の人々に俺は、感謝していた。
いつか、この国のためになることをできたら。
俺は、そう思っていた。
俺は、馬車に揺られながら女の子に貰った白い花のブーケを見つめて知らぬうちに微笑みを浮かべていた。
ふと、視線を感じてそちらを向くと、ラクアスと目があった。
また、嫌そうに目をそらされると俺は、思っていた。
だが、ラクアスは、優しく微笑みかけてきた。
マジか？
俺は、不覚にもラクアスの微笑みにドキドキしていた。
なんじゃ、こりゃぁっ！
こんな嫌なガキにときめいてたりしないよね？
そのとき、ガクンと馬車が揺れて停車した。
なんだ？
ドアが開くと、ハインリヒが顔を出した。
「メリッサ様、様子が変です」
「ええっ？」
俺は、ハインリヒに訊ねた。
「何が、どう変なんだ？」
「なんというか、街道の先から来るものがまったくいないんです。この時期に、こんな主要な街道で誰ともすれ違うこともないなんて」
うん。
そういわれてみれば、街を出た頃は、たくさんの馬車やなんかが通っていたけど、少し前からまったく通行するものがいなくなってたかな？
俺は、馬車を降りて街道の先へと目を凝らした。
遠くに、何か、人影のようなものが見えたので、俺は、ハインリヒに笑いかけた。
「ハインリヒ、気のせいだって。ほら、向こうから人が・・」
俺は、もう一度、前方を見た。
あれ？
俺は、目を擦った。
なんだろう？
何か、変？
なんというか・・
あれ、は・・
「アンデッドだ。アンデッドの大群が来る」
ラクアスが青ざめた表情で馬車から降りてきて呟いた。
「こんなところまで・・奴等が・・」
「奴等？」
俺は、ラクアスに問いかけた。
「奴って、誰だよ？」
「それは」
ラクアスが顔を背ける。
「お前には、言いたくない」
はい？
俺は、信じられない思いでラクアスを見た。
言いたくないって？
なんだよ？
そんなに俺が嫌いなのかよ！
