9-3 どこまでも行けるような気がする。
9ー3 どこまでも行けるような気がする。
俺は、みんなを誘ってキャンプに行くことにした。
ばあちゃんの許可をとり、装備も準備し、俺たちは、ロープウェーに乗り込んで地上を目指した。
今回は、アンナ先生とリューイ先生は、不参加だった。
「わざわざ田舎に虫を見に行くなんて気が知れない」
とアンナ先生は、言った。
そういうわけで、今回は、俺とアル兄とクロとキティとクロノ、リオン、ナノそれに保護者兼ボディガードのハインリヒたちというメンバーで出掛けることになった。
あっ。
それと、ラクアスもな。
俺たちは、地上へ向かうためにロープウェーに乗り込んだ。
俺たちがこの国に来たときは、少し小型の空船で直接王城の側の港へと降りたので、みんな、これに乗るのは初めてだった。
「わわっ!高い!」
キティが下を見て、声をあげた。
「でも、すごいきれい!」
「これ、落ちないよね?」
クロノがぼそっと言ったので、俺は、半笑いで答えた。
「落ちても、大丈夫だよ、クロノ」
このロープウェーには、反重力の機械魔法がかけられていて、落ちても安全になっている。
まあ、みんな、それぞれの反応で楽しんでくれているようだった。
俺がそれを見て微笑んでいると、アル兄がそっと近寄ってきて、耳元で呟いた。
「よかった。メリッサの笑顔が見れて」
「ええっ?」
アル兄の低い声に思わず、背筋がぞくぞくする。
アル兄は、俺の頬にかかったおくれ毛をはらいながら笑った。
「お前の表情が曇っていると、それだけで世界が陰っているようにおもえるよ、メリッサ」
マジですか?
俺は、ちょっと嬉しかった。
アル兄は、俺のこと心配してくれてたんだな。
俺は、なぜか、頬が熱くなってくるのを感じて、うつ向いた。
鼓動が、高鳴る。
ええっ?
俺、どうしちゃったの?
アル兄相手に、こんなドキドキするなんて。
そのとき、キティが叫んだ。
「空船が!」
はい?
俺は、みんなの見ている方を見た。
巨大な空船がロープウェーぎりぎりのところを飛んでいくのが見える。
うん。
相変わらず鳥肌が立つような光景だな。
「初めて空船を見たときのこと、覚えてる?」
アル兄が俺にきいたので俺は、頷いた。
「メリッサ、お前とならどこまでも行けるような気がするんだ」
アル兄は、俺の手を握った。
その温もりに俺もアル兄の手を握り返していた。