9-1 こんなとこでプロポーズかよ!
9ー1 こんなとこでプロポーズかよ!
なんで、こうなった?
俺は、迫り来る無数のアンデッドたちを炎の矢で貫きながら思っていた。
みんなは?
キティやクロノたちは、無事逃げられたのか?
そのとき、フェンリルの咆哮が聞こえた。
ナノ?
ごうっと風が巻き起こったと思ったら、巨大化したナノが駆け寄ってきた。
「ナノ!」
ナノは、俺を咥えあげると背中へと放りあげた。
「メリッサ!」
キティとクロノが俺を受け止めてくれた。
「キティ、クロノ、なんで、逃げなかった?」
「逃げられないよ、仲間を置いて」
キティが言うと、クロノも頷いた。
俺は、吐息をついた。
「まったく!」
俺がナノにしがみつくのを確認するとナノは、迫ってくるアンデッドたちを蹴散らして駆け出した。
クロとアル兄たちは?
俺が思ったとき、遠くで雷が走るのが見えた。
あれは、誰かの魔法だ!
「あっちだ!ナノ」
俺は、ナノの大きな耳に向かって叫んだ。
「がぅっ!」
ナノが吠えるとそちらに向かって走り出した。
アンデッドを踏みにじりながら走るナノが足を止める。
そこは、崖の上だった。
背後から来るアンデッドを俺は、ナノの背で向かい討つ。
「炎の剣よ、我が敵を燃やし尽くせ!獄炎剣!」
俺は、叫ぶと、炎の剣で背後の敵を切る。
炎に切られた者たちは、燃え上がった。
俺は、背後の敵を一掃すると、身を乗り出して崖の下の開けた場所を見下ろした。
そこには無数のアンデッドたちが蠢いていた。
また、光が走る。
目を凝らすと、そこにクロとアル兄たちの姿があった。
「アル兄!」
俺は、呼び掛けた。
「リオン、それから、クロ!」
「「「メリッサ!」」」
彼らが俺に気づいてこっちを見た。俺は、彼らに向かって、叫んだ。
「身を屈めろ!」
俺は、彼らが屈むのを見ると魔法を唱えた。
「燃え上がれ、炎獄の火よ!爆竜炎!」
ごうっと炎が渦巻く音がして、クロたちを取り囲んでいたアンデッドたちが一斉に炎に飲み込まれ一瞬で焼き尽くされる。
俺たちを乗せたナノは、まだ、煙をあげている灰の原に降り立ち、クロたちの方へと歩み寄っていた。
「凄まじいな、あなたの炎は」
クロの影から現れた金髪に緑の瞳の美しい少年が俺に言った。
「まさに、悪魔を焼き尽くす善神 ヴィシャスの炎、だ」
少年は、ナノに乗った俺の足元へとひざまづくと言った。
「やはり、私の国を救えるのは君しかいない。どうか、私の婚約者として私の国へ来てはくれないだろうか、メリッサ」
はい?
いきなり、こんなとこでプロポーズかよ?
俺は、言葉を失った。
どんだけだっちゅうの!