8-12 空クジラ
8ー12 空クジラ
「でも、メリッサ、このゲーム、なかなか面白いな」
アル兄が床から立ち上がりながら言った。
「少し、改良して売り出せばきっと売れるぞ。なんてゲームなんだ?」
「『陣取りゲーム』だよ」
俺が答えると、アル兄は、頷いた。
「よし、このゲームも商品化してみよう。きっと、カップルでやれば盛り上がるだろうな」
うん。
アル兄の目は、確かだな。
そうして俺たちが盛り上がっているとアンナ先生とリューイ先生がやってきた。
「何やってるの?あなたたち」
一瞬でその場の状況を理解したアンナ先生は、はいはいっ、と手をあげた。
「私も、やる!」
こうして、俺たちは、3拍4日の空の旅の間、わいわいきゃっきゃと過ごしていた。
船は、北のロンティ山脈を越えていく。
ここを越えればガーランド公国領土だ。
「メリッサ!」
ルーラに呼ばれて、俺たちは、船の甲板へと出た。
「うわっ!」
そこには、空クジラの群れがいた。
空クジラたちは、悠然とこの船の周囲を取り囲んで泳いでいた。
青い空に溶け込む体の色をした空クジラは、地上から見るとほとんど確認することができない生き物だ。
空を飛ぶものだけが、知るものだった。
「すごい!」
俺たちは、空クジラの群れの幻想的な美しさに魅了されていた。
「こんなに集まってくるとは、珍しい」
ルーラが言った。
「やはり、主の帰還を喜んでいるのかもしれんな」
主の帰還?
ルーラが笑った。
「何でもない。気にするな、メリッサ」
そのとき、ナノのきゃうん、という鳴き声が聞こえた。
俺が振り向くとナノの上に一匹の小さな子クジラが飛んできてナノの頭を突いていた。
「ははっ、彼らは、フェンリルが珍しいんだろう」
ルーラが声をあげて笑った。
「地上の王、フェンリルも空では、かたなしだな」
ナノがくうん、と鼻を鳴らしたので、俺たちは、笑い声をあげた。
その後で、ルーラが言った。
「しかし、フェンリルを従魔とするとは、さすがは、メリッサだな」
師匠に誉められて、俺は、悪い気はしなかった。
「きゃうん!」
空クジラの子供からやっと逃れて、ナノが俺の方へと走ってきた。
「どうしたんだ?ナノ」
「きゅうん」
「さすがの勇猛なフェンリルも、空クジラの子の前では、ただの子犬だな」
俺は、ナノを抱き上げて頬擦りした。




