8-7 王都襲撃!
8ー7 王都襲撃!
その日の夜のことだ。
王都に突然警報が鳴り響いた。
「何?」
俺は、飛び起きると屋敷の庭へと走り出た。
東の空が禍々しく燃えていた。
街の一角から炎が燃え上がっている。
「魔物です!魔物が街を襲撃しています!」
ハインリヒが俺に知らせてくれた。
マジか?
「どうやらオロチが街に侵入した様です」
グリムが屋敷の勝手口から駆け込んできた。
「今は、騎士団が応戦していますが、長くは持ちそうにありません」
「 飛竜騎士団?」
俺は、一応聞いたがグリムは頭を振った。
「いえ、今、この王都には、普通の騎士団しかいないようです」
「なんで?」
俺がきくと、レンボストが答えた。
「みな、夏期休暇にて街を出ているとのことです」
なるほど。
俺は、納得したけど炎の燃え上がっている方向を見てきいた。
「ヤバくね?なんか、どんどん近づいてるんだけど?」
「危険ですので、メリッサ様、避難の準備をされてください」
ハインリヒが言った。
俺は、部屋に駆け込むと動きやすい白のワンピースに着替えるとすぐに外へと駆け出した。
「クロ!」
「おう!」
聖獣の姿になったクロがすぐに俺の側に駆け寄ってくる。俺は、クロに股がった。
「メリッサ様!どうされるおつもりですか?」
ハインリヒが背後から叫んだので俺は、振り替えって答えた。
「ちょっと騎士団を援護してくる!」
「ダメです!お止めください!メリッサ様!」
「大丈夫だよ、危ないことはしないから」
って、もう、近づくことがすでに危険なのかな?
クロは、すごい勢いで街の建物の屋根の上に飛び乗り走り出した。
俺は、クロの背にしがみついた。
俺たちは、炎の見える方向へと、逃げ惑う人々の頭上を走った。
暗闇の中にオロチの不気味な姿が浮かび上がっていた。
どうやら騎士団は、ほぼ戦闘能力を失っているようだ。
俺は、ふと泣き声が聞こえたような気がして辺りを見回した。
すると、オロチと騎士団の戦っている辺りの物陰に2人の子供の姿が見えた。
「クロ!」
俺が言うと、クロが間髪入れずに走り出した。
俺たちは、物陰に隠れている子供たちの方へと向かうと2人に声をかけた。
「はやく、こっちへ!」
子供たちは、怯えながらも俺たちの方へと駆け寄ってきた。俺は、すぐに2人をクロの背に引き上げた。
「しっかり捕まってろ!」
クロは、子供たちがしっかりと掴まったのを確認してから走り出した。
俺たちは、炎の中を駆け抜けて安全な場所まで子供たちを届けると、再び、戦場へと戻った。
騎士団は、壊滅状態だ。
俺たちは、オロチの前に立ちふさがった。
「水よ!」
俺が命じると俺とクロの回りに水が渦巻いた。
「オロチを捕獲せよ!水鎖輪!」
俺が手を振りかざすと水の鎖がオロチを縛り上げていった。
オロチが咆哮をあげて鎖を断ち切ろうと暴れたが、全身を縛り上げる鎖は、どんどんと数が増えていっていき、ついには、オロチは身動きがとれなくなった。
俺は、氷の刃をいくつか作り上げると、それをオロチに向かって放つ。
「氷零刃よ、オロチを切り裂け!」
氷の刃は、回転しながらオロチへと切りかかった。
オロチは、8つの首を同時に切り落とされ、そのまま地響きをたてて倒れた。
オロチが倒れても、まだ、街は燃えているし、人々は、逃げ惑っている。
だが、騎士団の連中は、傷つき動けそうになかった。
俺は、天候魔法で王都一帯に雨を降らせると炎を沈下させた。
そして、エリアヒールを発動させた。
これで、この辺にいる騎士団の連中は、傷が癒されるはずだ。
俺とクロは、騎士団の連中が騒ぎをおさめるのを見守ってから彼らに背を向け、屋敷へと戻った。
「メリッサ様、ビショビショじゃないですか!」
サイがクロの背から降りた俺にすぐに白い布をかけるとぶつぶつ言いながら、俺を部屋へと引っ張っていった。
「危険なことはしてないでしょうね?メリッサ様」
サイは、風呂の用意をしながらも俺に文句をいい続けていた。
「本当に、もう2度と、危ないことはしないでくださいね!メリッサ様、あなたに何かあれば私たち、トゥレッド様に殺されちゃいますからね!」