7-11 もしかしたら?
7ー11 もしかしたら?
「ええっと・・」
アンナ先生は、ダンジョンから出てきた俺たちを目にして言葉を失っていた。
先生は、一瞬、ホッと吐息をついてから、俺たちに言った。
「また、あなたたちなの?」
「はぁ・・」
俺は、アンナ先生に言われて、そっと視線をそらしていた。
アル兄は、アンナ先生に言った。
「何も、問題はないです。課題も達成しましたし」
アル兄は、腰の鞄からヒカリグサを取り出してアンナ先生に差し出した。
うん。
明るいところで見ると、ただの雑草だな。
これが、すごい薬草だなんて信じられない。
「とぼけないで!」
アンナ先生は、俺たちに言った。
「その、足元にいる生き物は、何なの?」
「はい?」
俺は、子犬を抱き上げてアンナ先生に差し出した。
「子犬です。かわいいでしょ?」
「嘘おっしゃい!」
アンナ先生が叫んだ。
「それは、フェンリルでしょう!」
「えっと・・」
俺は、フェンリルを抱き締めて上目使いに微笑んだ。
「そうとも言うかも」
「あなたたちは・・ほんとに・・」
アンナ先生がふらっと倒れそうになるのをアル兄が抱き止めた。
「先生、大丈夫ですか?」
「あ、アルム・コンラッド君?」
アンナ先生がぽっと頬を染めたのを俺は、見逃さなかった。
マジかよ?
女の先生をたぶらかすなんて、 アル兄、ほんと性格変わってるな!
「だ、ダメよ、そんなの、私は、教師で、あなたは、教え子なのよ」
はい?
俺たちの見ている前でアンナ先生は、自分の世界に没頭していた。
「ああ。なんで、あなたは、アルム君なの?こんな風に出会ってしまうなんて、なんて悲恋なの!」
「もう、大丈夫そうですよね?」
アル兄は、アンナ先生の側に立っていたリューイ教官にアンナ先生を丸投げしさっさと背を向けた。
アンナ先生は、リューイ先生をきぃっと睨むと俺たちに向かって叫んだ。
「あなたたち!こんないたづらでみんなを困らせるなんて、承知しませんよ!」
というわけで。
俺たちは、宿の先生たちの部屋の前の廊下に並んで正座させられた。
何?
こっちの世界にもこんな昭和なお仕置きってあったの?
「クロ、アンナ先生は、もしかしたら・・」
「もしかしたら、何かしら?ネイジア・メリッサ・フォン・デルム・ガーランド」
にっこり微笑んでいるアンナ先生が俺とクロの前に立って、俺たちを見下ろしていた。
なんか、コワッ!
だって、この人、目が笑ってないんだもん!
「いえ、その、あの、もしかしてアンナっ先生って、異世界から」
「言っちゃ、ダメ!」
アンナ先生は、俺の口許を両手で押さえると叫んだ。
「みんな、ここから動いちゃダメよ!これから、先生は、ガーランドさんとお話があるから!」