7-6 ダンジョンですと?
7ー6 ダンジョンですと?
「いろいろあったみたいだけど、これから君たちは、一心同体、運命共同体となるわけだ」
真剣に聞いている俺たちに、アル兄が話した。
俺とクロとキティとクロノの4人は、屋上庭園の隅の東屋にいた。
あの後、俺は、上級生たちの教室へアル兄を探しに行ったんだよ。
アル兄は、俺たちの事情を聞くと、俺たちを屋上庭園へと導き説明を始めた。
「これから君たちは、全てにおいて協力をしていく必要がある」
アル兄によると、カップリングの相手とは、二人三脚みたいなものなのだという。
試験においてカップリングの相手のどちらかが落第すれば、もう1人も連帯責任で落第だし、課題には、このペアで臨まなくてはならない。
「実は、過去にカップリングが3人で行われた例はない訳じゃないらしいんだ」
アル兄が言った。
「単純に生徒の数の問題だったらしいけど、ね。まあ、君たちみたいな4人でというのは珍しいんだろうな」
俺たちは、とりあえずアル兄の薦めで自己紹介から始めることにした。
「俺は、ネイジア・メリッサ・フォン・デルム・ガーランド。メリッサと呼んでくれればいい」
俺は、言った。
「ガーランド公国からの留学生だ。よろしく頼む」
「俺は、クロムウェル・アートラム。クロと呼べばいい。メリッサと同じくガーランド公国からの留学生で、メリッサの、うぐっ!」
俺は、クロに向かってパンチを繰り出してから、笑顔で言った。
「次、キティ、ね」
「は、はいっ!」
キティが背筋をただした。
「わ、わたしは、キティ・ランディアです。父は、王都で小さな魔導具屋をしています。わた、わたしは、魔法も錬金術以外は苦手だし、勉強もあまり得意ではなくって・・その、とにかく、ごめんなさい!」
「次!クロノ!」
俺が言うと、クロノはぼそぼそと小声で話始めた。
「僕は、クロノ。クロノ・ジェンナー。父上は、騎士団のフェルムナード・ジェンナー卿だ。僕は、ジェンナー卿の5男で、家では、家族から幽霊と呼ばれている。得意なのは治癒術で将来は、どこかの治療院で治癒師になりたいと思っている」
えっと・・
なんか、突っ込みどころがいっぱいだな、クロノ!
なんか俺たちは、クロノの話を聞いているうちにどんよりと暗くなってきて、うつ向いていた。
そんな俺たちにアル兄は言った。
「みんな、落ち込んでる暇なんてないぞ。1か月後には、もう最初の試験が待ってるんだからな」
「最初の試験?」
俺がアル兄を見上げて訊ねると、アル兄が頷いた。
「ああ。ダンジョンに生えているヒカリグサを採集してくるというだけのものだけどな」
「ダンジョン?」
俺は、目を煌めかせた。
ファンタジーの王道じゃん!
だが、そんな俺にアル兄が申し訳なさげに説明した。
「まあ、ダンジョンっていっても、もう魔物もほとんどいない枯れダンジョンだからな。一応、上級生が監督につくし」
アル兄が俺に微笑みかけた。
「メルには、僕が付き添ってやるから大丈夫だよ」
アル兄が?
俺は、昔のことを思い出して複雑な気持ちだった。
あの、アル兄だからなぁ。
俺は、思っていた。
ほんとに大丈夫なんですか?