7-5 お友だちが増えました?
7ー5 お友だちが増えました?
午後から俺たちのクラスは、中庭にある闘技場に集められていた。
「みなさん、お静かに!」
ざわめいている生徒たちに向かって、アンナ先生が叫んだ。
「これから、カップリングの相手を決めていただきます。相手の決まった方は、契約の儀式を行ってくださいねぇ」
「さあ、始めるぞ、キティ」
俺は、キティに向き合って言った。キティは、おどおどしている。
「本当に、わたしなんかでいいのですか?」
「俺は、お前がいいんだ!」
俺が手を差し出すとキティは、おずおずとその上に手を置いた。
俺たちは、2人で手を取り合って呪文を唱えた。
「「苦しき時も、楽しき時も、共に進まん」」
「ちょっと、待ったぁっ!」
クロが突然飛び込んできて俺に背後から抱きついた。
「わっ、わっ!!」
契約の魔法が俺たち3人を包み込み、絡めとった。
ぼんっ!
爆発音がして、俺たちは、ぶっとんだ。
「んぅっ・・」
「メリッサ!大丈夫か?」
クロが俺を助け起こすが、俺は、すぐにクロを突き飛ばしてキティの方に駆け寄った。
「キティ!大丈夫か?」
「は、はい、なんとか」
「あなたたち、どうしたの?」
アンナ先生が慌てて駆け寄ってきた。
「契約が・・3人で?こんなの聞いたことないわ!」
「はい?」
俺たちは、それぞれの左手の薬指を見た。
そこには銀色に輝くリングがはめられていた。
「エンゲージが成立している以上、あなたたちは、すでにパートナーとして認められているということになるわね」
アンナ先生が溜め息をついた。
「こんなこと、初めてだわ」
マジかよ?
みんなが無事にカップリングをすませた後、俺たちは、その場に残された。
いや、正確には、俺とクロとキティ、そして、知らない人。
知らない人は、クラスメートなんだろうけど、全然印象に残らない感じの少年だった。
眼鏡をかけてて、赤毛で緑の目をしたパッとみ、なかなかのイケメンで背も高くて人目を引きそうな気がしたが、なんというか存在感が薄い。
「クロノ・ジェンナー」
知らない人のことをアンナ先生は、そう呼んだ。
「あなたが残ってしまったのね」
うん?
なんでも、アンナ先生いわく、俺とクロとキティが3人でエンゲージしてしまったせいで、1人あぶれてしまった生徒がいたらしいのだが、それがこのクロノ君らしかった。
「この学園でのカップリングは、一生ものの友を作るためのものでもあるのよ」
アンナ先生は、困り顔でもう1人の立ち会い教官である背の高い黒髪に青い目をした長髪のお兄さんの方を見た。
「どうしたものかしらね?リューイ君」
「ああ?」
リューイ君は、めんどくさげに俺たちのことを眺めると言った。
「もう、この4人でカップリングしちゃえばいいんじゃないっすか?アンナ先生」
「でも」
「いいから、いいから。俺に任せてくださいよ」
リューイ君はそう言うと、俺たち4人に向かってエンゲージの魔法を唱え始めた。
「苦しき時も、楽しき時も、共に進め!」
「ちょっと!待ちなさい、リューイ君!」
アンナ先生が止めようとしたが、もう遅かった。
エンゲージの魔法は、発動し、俺たち4人は4人でカップリングしてしまうことになった。
「まずいって、リューイ君!」
アンナ先生がぼそぼそとリューイ君の耳元に囁いた。
「この金髪の子は、ガーランド公国の・・」
「マジですか?」
リューイ君がテヘペロっと舌を出して笑った。
「いいんじゃね?たくさんお友だちができて」
んんっ?
この人、なんだかいい加減だな!
リューイ君は、呆然としている俺たちの方に向き直ると言い放った。
「まあ、仲良くしろよ、お前たち。これも運命だ」
はい?
リューイ君は、それだけ言うとさっさと去っていった。
アンナ先生は、俺たちににっこりと微笑んでいった。
「いい?みんな、今日あったことは、家族や他の先生たちには内緒よ」
ええっ?
マジですか?