7-4 ペアになろう!
7ー4 ペアになろう!
ペア、か。
俺は、庭園を歩きながら考えていた。
俺がペアを組みたい相手がいるとしたらアル兄だけなんだがな。
俺は、ふと立ち止まって見慣れない白い鳥が枝にとまっているのを見上げた。
「ちょ、ちょっと、どいてぇっ!」
「はい?」
振り向いた俺は、誰かに体当たりされて地面に押し倒された。
ええっ?
俺は、地面に倒れ込んだ時の痛みに顔を歪めた。
「わあぁっ!!ごめんなさいぃっ!」
豊かな黒髪を肩までのおかっぱにした少女が慌てて俺の体の上から飛び退いた。
「あわわっ・・メガネ、メガネ・・」
「これ?」
俺は、側に落ちていた分厚いレンズの眼鏡を少女に差し出した。少女は、それを受けとると装着し、そして、ぼぇっ、とおかしな声を発した。
「あ、あの・・ローザの君?」
ローザの君?
何、それ?
俺は、キョトンとして赤くなったり青くなったりして1人で騒いでいる少女を見つめていた。
「あわわわわ、ごめんなさい!ご無礼を!」
「いや、気にしないで」
俺は、服の埃を払いながら立ち上がると、きいた。
「それより、何してたわけ?」
「あ、あの・・」
その少女は、しどろもどろと俺に答えた。
「あ、新しい魔導具の実験をしてて、その・・」
「魔導具?」
俺は、少女の足元を見た。
スケートボードみたいな板が転がっている。
「これに乗って移動するわけ?」
俺が訊ねると、その少女は、頷いた。
「そそ、そうでございましゅっ!」
ございましゅ、って。
俺は、吹き出してしまった。
なんだ、この面白い生き物は?
「俺は、ネイジア・メリッサ・フォン・デルム・ガーランド。君、名前は?」
「あ、あの、キ、キ、キティ・ランディアでございます」
このキキキティさんは、俺は、気づかなかったけど俺のクラスメートだったらしい。
「わ、わたしは、魔法が苦手で、その、魔導具を造る魔導技師になりたくて・・」
「マジか」
俺は、にっこりと微笑んだ。
「その魔導具、ちょっと見せてくれる?」
「は、はいぃっ!」
俺は、キティの魔導具とやらを手にとった。
うん。
この板に魔法の回路が刻み込まれていて、ここに魔力を流すことで地面から浮き上がって動く仕組みみたいだな。
「どうせなら、もう少し大きな板にして空を飛ばせばいいんじゃね?」
「はい?」
きょとんとしているキティに俺は、言った。
「これ、商品になるよ!」
「へぁっ?」
呆気にとられているキティをよそに、俺は、アル兄とこれを商品化することを考えて盛り上がっていた。
「そうだな。商品名は、『サーフボード』にしよう!」
「さ、さーふぼーど?」
「うん。水陸空で使える移動用のボードだ!」
俺は、キティの手を握って言った。
「俺たち、ペアになろう!」
「はいぃっ?」