6-12 入学したはいいけれど
6ー12 入学したはいいけれど
翌日の入学式は、大変な人出だった。
新入生の家族やらなんやらが学園に押し掛けてお祭り騒ぎだ。
俺は、本来、入学式で新入生代表で挨拶をすることになっていたけど、じいちゃんがあまり目立たない方がいいだろうということでそれは、回避できた。
俺の代わりに新入生代表をつとめたのは、現王太子の王子であるプジョン・エイル・イーゼルだ。
「なぜ、つとめを果たそうとしない?」
そう、プジョンは言ったらしいが、じいちゃんにこの国の王子のほうがそれに相応しいと言われて納得したらしい。
うん。
その方が俺も助かるしな。
そうして俺とクロは、魔法学園の生徒となった。
俺とクロを祝うために学園を訪れる者はいなかった。
でも、俺たちには、お互いがいた。
まあ、前世からの腐れ縁だけどな。
俺とクロは、同じクラスだった。
これは、この学園では異例なことだったらしい。
本当は、俺は、特別クラスに入る筈だったのだが、じいちゃんがクロと一緒の方がいいだろうと言って俺を普通クラスに入れてくれたのだ。
じいちゃんいわく、
「お前の実力ならどのクラスでも変わりはない」
確かにな。
それに、俺も、特別クラスの 鼻持ちならないお貴族様たちといるよりも、一般の生徒たちといる方がいい。
でも。
クロと同じクラスかぁ。
俺は、複雑だった。
クロの奴は喜んでいたけど、俺は、素直に喜べない。
クロと学園生活を送るなんて。
俺は、今から心配していた。
クロの奴がちゃんと学生できるわけ?
だって、こいつ、猫だし。
それなのに俺の心配をよそに、クロの奴は、入学早々クラスの女の子たちから告白されたりしていて、俺は、なんか、ムカついていた。
マジでかよ?
みなさん、騙されてますよ!
「何、怒ってるんだよ?」
帰りの馬車の中でクロが俺にきいたので俺は、答えてやった。
「別に」
そう。
俺は、怒ってなどいなかった。
ただ、本当なら俺がいるべき場所にクロがいることが納得できなかっただけだった。
俺だって、かわいい女の子に囲まれてモテモテの学生生活を送りたいのに。
俺、もう、モテモテ人生なんてないんだ。
だって、俺、外見美少女だし。
よってくるのは、男ばっか。
もう、人生詰んでる。
俺は、ふっと思った。
俺、もう、いっそこれから先の人生は男として生きていこうかな。
そうだな。
男装して、男として生きていけば、ちょっと楽しいかも。
俺がそう思っていたら、クロが見透かしたように冷たく言った。
「メリッサ、あまり目立つことはしない方がいいぞ。お前は、そのままでもかなり目立つんだし」
はい?
「後」
クロは、俺の髪を弄びながら俺ににやりと微笑んだ。
「俺の愛する者は、お前だけだからな」
はぁっ?
俺は、ぷぃっと横を向いた。
「なんとでも言ってろ」
まじで先が思いやられる。
俺は、深い溜め息をついた。