6-11 夜の来訪者たち
6ー11 夜の来訪者たち
こうして俺とクロの魔法学園への入学は決まった。
遠話の魔法で知らせをきいたばあちゃんは、微かにちっと舌打ちをした。
はい?
マジですか?
俺が、驚いていると、ばあちゃんは、何事もなかったかのように優しく微笑んだ。
「よかったわね、さすが私の孫たちだわ」
俺は、ホッと胸を撫で下ろした。
よかった。
気のせいだ。
ばあちゃんは、なんとかして入学式に来たいといっていたが、ちょっと難しそうだった。
だって、ばあちゃんは、ガーランド公国の女王だからな。
その代わりというのはなんだったが、入学式の前日の夜、俺たちの王都の家を思わぬ客が訪れた。
コンラッドの父様、母様だ。
2人は、俺の姿を見ると信じられないというように泣き崩れた。
特に母様は、泣きながら俺を抱き締めて離そうとしなかった。
「メリッサ!本当に、あなたなのね」
「母様、痛いよ」
俺も母様を抱き締めた。
母様は、かわらずいい香りがしていた。
俺は、というかメリッサ・コンラッドは、死んだことになっていた。
最初、じいちゃんたちは、これを取り消そうかと思ったらしい。
でも、俺の話をきいたじいちゃんたちは、このまま俺が死んだことにするべきだと結論づけた。
それは、ルーラと揉めたくなかったのと、それとルーラの言う俺の命を狙っている何者かから俺を隠すためには、この方がいいということになったからだった。
だから、俺と父様、母様が会うのはあまりおおぴらにはできないことだった。
父様、母様は、夜陰にまぎれてわざわざ貸し馬車に乗ってここまで来てくれていた。
俺と、コンラッド家の関わりがみんなの知るところになると、せっかく俺が死んだことにしている意味がないから、と言って2人は、身なりも町人風に変えて来てくれていた。
俺たちは、夜が更けるまで語り合った。その間、ずっと2人は、俺の手を握って離さなかった。
夜が開けるまでには、2人は去っていったけど、俺は、満足していた。
失ったもの、すべて、取り戻した。
だけど。
俺は、少しだけ胸が痛んだ。
ばあちゃんに内緒で父様、母様たちに会っていることがなんだか、ばあちゃんに対する裏切りのような気がしていたんだ。
いつか、必ず、ばあちゃんに俺の家族たちを会わせたい。
そう、俺は思っていた。