6-8 試験が終わって
6ー8 試験が終わって
ちょっと、他の人たちのレベルの低さに俺は、驚きを隠せなかった。
こんなんで大丈夫なわけ?
他のグループの連中も試験が終わったようだった。
俺は、クロを探して駆け寄った。
クロは、すでに女の子たちの視線を集めていた。
無理もないな。
この外見で、しかも、あの実力じゃな。
きゃっきゃ言われるのも仕方がない。
「ちょっと、やりすぎたかな」
クロが舌打ちした。
「他の連中がこんなレベルなら、俺ももう少し手を抜いたのに」
「いいんじゃね?」
俺は、クロの胸元を小突いて笑った。
「今日のヒーロー賞は、お前のもんだな、クロ」
「言うな!」
クロが真っ赤になった。
「恥ずかしい」
「ところで」
俺は、クロにきいた。
「アル兄は見つかったか?」
「いや。俺の見た限りじゃ、あいつはいなかった」
クロは、言った。
「でも、確かに奴の気配は感じたんだが」
「マジか?」
俺は、辺りを見回した。
「どこ、どこ?」
「それがどこにいるのか、特定できない」
クロが言うので、俺は、吐息をついた。
「まあ、いればその内、わかるか」
当然、俺とクロは、合格だった。
だけど。
結局、今期の入学試験の合格者の中には、アル兄の名はなかった。
「残念。あいつ、試験に落ちたみたいだな」
クロが嬉しそうに言うのを睨み付けながら、俺は言った。
「もしかしたら、補欠合格とかなのかも」
「補欠?」
クロがきいた。
「なんだ?それ」
「それは」
「失礼。ネイジア・メリッサ・フォン・デルム・ガーランド殿ですか?」
不意に名を呼ばれて俺が振り向くと、そこには、子供ぐらいの背丈の灰色の猫が立っていた。
ええっ?
猫?
「ネイジア・メリッサ・フォン・デルム・ガーランド殿でしょうか?」
猫は、もう一度きいた。
俺は、無言で頷いた。すると、猫は言った。
「学園長がおよびです」
はい?
俺は、ちらりとクロを見た。
猫は、言った。
「よろしければ、クロムウェル・アートラム殿もご一緒にどうぞ、とのことです」
「は?」
クロがハトマメ状態で、俺の方をうかがった。