6-7 マジですか?
6ー7 マジですか?
「命中か。しかも、小さいが穴まで開けるとは、なかなかやるな」
教官が言った。
「次、プジョン・エイル・イーゼル」
「はい」
チャラそうな金髪の兄ちゃんが進み出るのを見て俺は、マジか、と思っていた。
こいつ、現王太子の息子?
つまり、シュナイツの甥っ子かよ?
プジョンは、両手を前に突き出すと口の中でぶつぶつと魔法の詠唱を始めた。
どうやらプジョンは、水系の魔法を使うようだった。
「貫け!氷の刃よ!」
ひゅっと空を切る音がして氷の礫が飛んだ。
うん。
惜しい。
氷の礫は、微かに的をかすめて消滅した。
「さすが、王族だけのことはある。なかなかやるな」
グルート教官が言って、次の者の名を読んだ。
「ライザ・ショーレッド!」
「はい!」
銀髪の美少女が進み出ると、また、何やら口の中でもごもご唱え始める。
プジョンに比べて、少し長い呪文を唱え終わるとライザは、叫んだ。
「凍てつけ!氷の華よ!」
なんだろう。
微かに、的の周辺が凍りつくのがわかった。
辺りがまたざわめいた。
「すごい!あんな遠くの的を凍らせるなんて!」
はい?
俺は、正直、ひいていた。
こんなんですごいわけ?
「さすがは、氷の魔導師 ウルグ・ショーレッド殿のご息女だけのことはあるな。次!」
教官は、次の者の名を呼んだ。
「クレイ・ジョージズ」
「は、はいっ!」
地味な黒髪眼鏡君が進み出る。
クレイもまた口の中でもごもご何かを呟くと言った。
「我が敵を撃て!光の矢よ!」
クレイの指先から光が走り、的の上部をかすめた。
また、ざわめきが起きる。
マジでか?
俺は、きょろきょろと周囲を見回した。
みんな、こんなレベルなわけ?
「ルル・レイジア!」
「はい!」
最後の赤毛赤目の小柄な女の子が進み出る。
なんか、この子にいたっては、おおぎょうな魔法の杖みたいなの持ってるし。
ルルもなんか呪文を唱えると杖を振り上げた。
「いけ!ゴーレム!」
はい?
ルルの足元の土がぼこっと盛り上がり、子犬ぐらいの土人形が現れ走り出した。
土人形は、的へと走り寄るとそれによじよじと登り、そして、的へと張り付いた。
「すごい」
俺は、思わず呟いた。
うん。
これは、なかなかすごいんじゃね?
でも、他の人々は、冷ややかだった。
やがて、教官が口を開いた。
「土魔法か。まあ、いいだろう」
教官は言った。
「このグループのメンバーは、全員合格だ!」
俺以外の全員が満面の笑みを浮かべていた。
でも、俺は、笑えなかった。
マジで、ここでやってけるのかな。
俺は、溜め息をついていた。