5-10 共犯者たち
5ー10 共犯者たち
「俺たち、このままガーランド公国に連れてかれちゃうのかな?」
俺がきくとハインリヒが答えた。
「そうですね、たぶん」
「マジか・・」
俺は、がっくりと肩をおとした。
万が一、地上に寄港することがあったら、逃げることもできたかもしれないのに。
俺の様子を見ていたハインリヒが問いかけた。
「どういうことですか?メリッサ様」
「実は、さ」
俺は3人に事の次第をかいつまんで話した。すると、もともと涙もろかったらしいハインリヒが目尻を押さえながら俺に言った。
「それはお辛いでしょう。そのお年で育てのご両親様や気心の知れた兄上様と引き離され、2度と会えないなんて」
「2度と会えないことはないと思うのですが」
ずっと黙って俺の話を聞いていたレンボストが口を開いた。
「あなたは、来年、兄上様と同じ魔法学園に入学するご予定だったのでしょう?」
「うん、そうなんだけど」
「ならば、そうされたらよいのでは?」
はい?
レンボストの言葉に、俺は、小首を傾げた。
レンボストは、俺に説明した。
「つまり、あなたは、まだ年若い。いづれはどこかの学園でこの世界について学ばれることになることでしょう。ならば、来年、兄上と同じ学園で学ばれることにされればよいのでは?」
「それは・・」
俺は、考えていた。
もとの家族と会わせてもくれない連中が、それを許してくれるのだろうか?
しかし。
俺は、ぐるぐる頭を回転させていた。
これは、頼んでみる価値はあるのかも。
だって、いくらガーランド公国の連中だって、アル兄の進学の予定まで調べてはいないかもしれないしな。
とにかく、可能性は、ある。
俺は、にんまりと笑った。
「いいかもしれないな」
「私たちは、どこまでもあなたに忠誠を誓い、ご一緒いたします、メリッサ様」
3人は、にやりと笑った。
俺たちは、このことで共犯となったわけだった。
俺は、ドアの横に立っているメイドさんの方をちらりと見た。
メイドさんは、慌てて俺から目をそらした。
俺は、悪い笑顔でメイドさんに言った。
「お姉さんも、共犯になるよね?」
「はいぃっ?」
メイドさんが俺たちに凝視されて震え上がって答えた。
「お、お許しを!私には、病弱な両親と頭の弱い兄が!」
頭が弱いって。
俺は、メイドさんに言った。
「お姉さんも、俺と一緒に学園に行ってくれるよね?」
俺の魅了の力の前に、お姉さんは、頷いた。
「もちろん、喜んで!」
俺は、にやりと笑った。
これで、アル兄に会える!