5-7 もう家には戻れない。
5ー7 もう、家には戻れない。
「俺の命、が・・?」
っていうか、俺、捨て子じゃなかったの?
俺は、クロの方を見つめた。クロもこの話は初耳だったらしくって、驚いた様子だった。
俺たちは、ルーラの言葉を待った。
ルーラは、話を続けた。
「幸いなことににあなたは、この変わった聖獣に救われ、コンラッド家の者たちに拾われ大切に育てられた」
ルーラが微笑んだ。
「あなたは、とても運がいい」
母様、父様、アル兄。
俺は、俺の家族たちのことを思って目が潤むのを感じた。
みんな、心配しているだろうな。
じいちゃんも。
早く、みんなのもとに帰りたい。
「俺、いつ頃、父様たちのところへ戻れるの?」
俺がきくと、ルーラは、表情を曇らせた。
「もう、あなたは、コンラッド家には、戻ることはできない」
はい?
俺は、ルーラを凝視した。ルーラは、続けた。
「あなたは、あのイクサール島で死んだことになっている」
なんですと?
俺は、信じられないものを見る目でルーラを見つめていた。
俺、死んじゃったの?
でも、生きてるじゃん!
「なんでそんなことに」
「すべては、あなたを守るためだ」
ルーラが言った。
「あなたが生きていることを彼らが知った以上は、これまでのようには暮らせない。あなたは、本来、あなたがいるべき場所へ帰らなくてはならない」
「俺が本来いるべき場所?」
「ああ」
ルーラが頷いたので、俺はきいた。
「俺がいるべき場所って、どこだよ?」
「ガーランド公国、だ」
はい?
ガーランド公国ですと?
そんな国、俺には、縁もゆかりもない筈だ。
俺は、ルーラに問うた。
「なんで?俺、そんな国、知らないぞ」
「あなたは」
ルーラが答えた。
「ガーランド公国の唯一無二の王位継承者だからだ」
なんですと?
俺は、驚きのあまり言葉もでなかった。
俺がガーランド公国の王位継承者だって?
マジですか?
俺なんかが王位を継いだら国が滅ぶんじゃね?
俺は、指が少し震えていた。
どうしろっていうわけ?
俺は、普通の人間なのに。
クロの暖かい手が俺の手を包み込んだ。
俺は、クロの方を見た。
クロは、まっすぐにルーラを見つめ言った。
「あんたたちの好きにはさせない。メリッサは、俺が守る!」




