4-9 3人の使命とは
4ー9 3人の使命とは
俺たちは、この3人が殺した者たちを葬るのを見守っていた。
彼らが、それをすませてから、俺とクロは、彼らを森の近くに置いていた食料のもとへと案内した。
俺とクロと男たちは、協力して木の枝を集め火を焚いた。
俺たちは、火の回りに腰を下ろして木の枝に刺したキノコをあぶって食べたり、瑞々しいリンゴとよく似た木の実を食べた。
男たちは、ポツリポツリと自分達の身の上を明かした。
彼らは、南の果ての国、グリナンデ王国の大使つきの武官たちだった。
どうりで、ならず者たちと戦い勝ち残ったわけだ。
みな、地味な外見のわりにごつい体格をしていた。
「それが、なんでこんなとこに流されてきてるわけ?」
俺は、しゃくしゃく、と音をたてて木の実を齧りながらきいた。
1番年長の赤毛のハインリヒという男が一瞬、口ごもってから低い声を発した。
「我々の罪は、イーゼル王国に対しスパイ活動を働いたこと、というものだ」
「へぇー」
俺は、口許を拭って、食べ終わった木の実の芯を火の中へ投げ入れた。
「俺とほぼ同じだな。奇遇なことに」
「君が?」
「ああ」
俺は頷いた。
「俺は、国家反逆罪だと。亜大陸から来たスパイなんだってさ」
「無茶苦茶だな」
若い金髪の男、グリムが腹立たしげに言った。
「いくらなんでも、君みたいな女の子がスパイだなんて」
そうだよな?
俺は、火に枝をくべながら思っていた。
誰が聞いても変だよな!
「で?おっちゃんたちは、やったの?やってないの?」
俺の問いに、3人は、顔を見合わせて吐息をついた。
「我々は、ある意味ではスパイだったと言えるな」
ハインリヒが話し出した。
「実は、我々は、我々の母国グリナンデ王国の女王イーミル様の命で我が国の大使である人物の不正を暴くために調査をしていたんだが」
「大使の不正?」
クロがきくと、ハインリヒは頷いた。
「そうだ」
グリナンデ王国の大使は、女王の弟であるラドクリフ・グリナンデ候という人物らしいのだが、この人物がイーゼル王国と手を組んで悪さを働いているのではないかと考えた女王の命令で彼らは、動いていたのだという。
「なんの不正だよ?」
俺は問うた。
すると、ずっと黙っていた黒髪のレンボストが口を開いた。
「絹、だ」
「絹?」