3-12 空船に乗って
3ー12 空船に乗って
俺は、兵士たちに連れられてひっそりとした暗い廊下を歩いていった。
人々のざわめきが遠ざかっていく。
兵士たちは、俺を連れて城の裏口から外へと出ると、そこに用意されていた馬車に乗るようにと俺を促した。
どこかの修道院にでも俺を連れていくつもりなのか?
俺は、黙って、言われるままに馬車に乗り込んだ。
クロは?
俺は、一瞬、後ろを振り向いた。
背後で、激しく魔力がぶつかり合う感覚を感じていた。
クロ?
クロが戦っている!
「早く、乗るんだ!」
足を止めていた俺に、兵士が声を荒げた。
俺は、馬車へと乗り込んだ。
きっと、すぐにこんなの間違いだってわかる筈だった。
じいちゃんが、きっと助けてくれる。
俺は、馬車で揺られながら思っていた。
都の灯りは遠退いていき、都市を取り囲んだ壁から外へと出ていくのがわかった。
いったい、俺をどこへ連れていこうとしているんだ?
だけど、俺が、気にかかっていたのは、クロのことだった。
クロは、あのとき、俺が一方的に断罪されたとき、すでにあの場にいなかった。
たぶん、何者かがクロを俺から引き離していたんだ。
クロと戦えるものなんて、なかなかいない筈だ。
だとしたら、これは、かなり前から計画されたことだ。
俺を、反逆者として断罪することで誰が得をするってんだ?
俺は、馬車の中で考えていた。だが、まったくわからなかった。
馬車は、暗闇の中を走り続けた。
俺は、いつの間にか眠っていた。
辺りが明るくなってくるのを感じて目覚めると、馬車の窓から空船が飛んでいくのが見えた。
ここは、空船の港、サザンスクの町だった。
なんで、こんなところに?
俺を乗せた馬車は、空船がとどまっている港へと向かっていった。
俺は、空船をこんな近くで見れて、少し、テンションが上がってくるのを感じていた。
すごい。
どの船も、すごくでかい!
こんなものが空を飛ぶなんて、信じられない!
俺を乗せた馬車は、一隻の空船の前で止まった。
ドアが開かれ、兵士が俺に言った。
「降りろ」
俺は、黙って馬車から降りると、目の前にある空船を見上げた。
なんか。
この船だけ、妙にボロいな。
兵士たちは、俺を連れてこのボロい空船に乗り込んでいった。
長い階段をのぼりながら、俺は、側にいた若い兵士にそっときいた。
「これ・・空船だよね?俺、どこに連れていかれるの?」
若い兵士は、固く口を結んでいたが、低い声でぼそっと囁いた。
「これは、罪人たちを流刑地へと運ぶ船です、メリッサ様」
「流刑地?」
「はい」
その若い兵士は、小声で早口で言った。
「あなたは、これから南にある流刑島イクサール島へと流されるのです」
はい?
俺は、驚きを隠せなかった。
イクサール島?
マジか?
それは、俺みたいな子供でも知っている有名な流刑地だった。
噂では、草木も生えない腐った大地に、殺人者や、重犯罪者のみが送り込まれる場所だった。
その島から生きて戻ったものはなく、そこに送られるということは、ほぼ死刑と同じだと言われていた。
「なんで?」
俺は、叫んだ。
「なんで、俺がそんなとこに送り込まれなきゃいけないわけ?」
「落ち着いて。メリッサ様」
その兵士は、俺に囁いた。
「これは、きっと何かの間違いです。なんとか、1ヶ月生き延びてください。そうすれば、必ず、お助けします」
1ヶ月、生き延びるって・・
マジかよ!