3-7 朗報
3ー7 朗報
じいちゃんと母様は、舞踏室の隅で、何やら、ぼそぼそと話をしていた。
俺とアル兄は、ダンスの練習を続けていたが、2人が何を話しているのか気になって集中できずにいた。
「アル兄」
「何?」
俺たちは、手を取り合ったまま体を揺すりながら小声で話していた。
「じいちゃんと母様は、何を話しているのかな?」
「たぶん、僕の魔法学園の入学についての話じゃないかな」
アル兄が少し自慢げに言った。
「僕は、もう、今年で14才になるからな。来年は、学園に入学の年だもの」
「もし、アル兄が魔法学校に入学しちゃったら、俺、1人になっちゃうのか」
俺は、うつ向いた。
アル兄は、俺をグルンと回転させて、正面で受け止めた。
「仕方がないじゃないか。僕たち、4才も年が違うんだから。一緒には学校に入れないよ」
「そうだけどさ」
俺は、アル兄の方へ一歩踏み出し、アル兄は、慌てて足を退いた。
「今のは、わざとだな、メリッサ!」
「ばれちゃった?」
俺は、笑った。アル兄は、少し怒った様子で俺のことを捕まえようとした。
「この!」
アル兄が俺に掴みかかってくるのを、俺は、ひょいっとかわして素早く逃げ出した。
「待て!この!」
「へへん!俺に追い付けるのかよ?アル兄」
舞踏室の中で追いかけっこを始めた俺たちに、母様が叫んだ。
「2人とも、いい加減になさい!」
母様の本気バージョンの声に俺とアル兄は、ピタリと凍りついた様に立ち止まった。
「あなたたちは、ほんとに!」
母様が頭を振った。
「こんな子達を来年から2人まとめて魔法学園に入れてしまって大丈夫なのかしら?」
「大丈夫、だ、クララ。あそこは、優秀な教師が揃っているからな。なんとかするだろう」
じいちゃんがそう言って、俺たちに向かってウインクをした。
俺とアル兄は、顔を見合わせていた。
「マジで?俺も来年、アル兄と一緒に魔法学校に入学できるの?」
「ああ」
じいちゃんが俺の頭を撫でた。
「特例ということでな。だが、もちろん、2人とも入学試験は受けないとダメだがな。仮にも、この魔導師団長 トラファルガー・シュトラトスの孫ともあろうものが魔法学校の入学試験ごときに落ちるわけはない。そうだろう?アルム」
「えっ?」
アル兄は、じいちゃんにきかれて、慌てて答えた。
「だ、大丈夫だよ!・・たぶん・・」
「ふむ」
じいちゃんが溜め息をつく。
「まあ、アルムは、普通にできる子なんだろうがな」
「そうですよ、お父様!」
母様がきっぱりと言い切った。
「私の子供たちは、2人とも優秀な子達ですから」
「まあ、ダンスは、あまり得意じゃないようだがな」
じいちゃんが笑っていったので、俺とアル兄も笑ってしまった。
母様がプンスカ怒って言った。
「笑い事じゃないのよ!2人とも。ダンスが上手じゃないと1人前のレディとはいえないんですからね」




