3-5 別たれる時
3ー5 別たれる時
この王都の屋敷は、母様の実家だということを俺は、翌日の朝知らされた。
母様は、昔、別の婚約者がいたのにも関わらず、父様と恋に落ちて駆け落ち同然に結婚したらしい。
だから、俺たちは、母様の実家を訪れたことがなかった。
だが、母様の父親である人、まあ、俺にとっては、義理のじいちゃんにあたる人物には、幼い頃から何度か会ったことがあった。
俺が初めてじいちゃんに会ったのは、まだ3才の頃のことだった。
覚えているのは、庭で1人遊んでいたこと。
そこに突然現れた白髪の背の高いじいちゃんに、俺は、驚いていきなり炎の礫をじいちゃんに向かって放った。
じいちゃんは、眉毛1つ動かすことなく俺の放った礫をかわすと、俺に近づいてきて覗き込んだ。
「この子は、混じっとるな」
じいちゃんは、俺のことをその不思議な、深い海の底を思わせるようなブルーの瞳で見つめた。
「これは・・エルフ、か?それもうんと古い血筋のもののようだが。それにしても、この年で無詠唱でこれだけの魔法を使えるとは、危ういな。実に、危うい」
「俺・・」
俺は、恐る恐るじいちゃんに聞いた。
「どこか、余所に行かなきゃダメかな?」
「なんだ、余所に行きたいのか?」
じいちゃんは、俺に問いかけた。俺は、頭を振った。
「嫌だ。ここがいい」
「なら、ここにいればいいだろう」
その後、俺は、じいちゃんの命でアル兄と一緒に家庭教師について学ぶことになった。
「まだ、3才なのに」
母様が溜め息をついたら、じいちゃんが咎めるように言った。
「例え、幼くとも竜は竜だし、獅子は獅子だ。相応の育て方というものがある」
それから、俺は、ずっとアル兄と一緒に学んできた。
勉強だけじゃなく、剣や、魔法も。
だけど、ずっと一緒じゃいられない。
来年には、アル兄は、王都に出てきてここの魔法学園に入学するだろう。
そうなれば、俺とは、もう一緒にはいられない。
今回の王都への旅は、アル兄の学校の下見でもあることを俺は、薄々知っていた。
そして、たぶん、アル兄も。