18-4 俺の中の力ですか?
18ー4 俺の中の力ですか?
ええっ?
俺は、ちらっとアル兄を見つめた。
俺たちの目的は、そんなことじゃなかったような。
アル兄は、軽く咳払いをした。
「ある意味、そうだとも言えますね」
マジですか?
アル兄の言葉をきいたロマさんは、涙ぐんだ。
「やっぱり、そうだったのね」
ロマさんだけではなかった。
多くの竜人たちが涙を浮かべていた。
「ああ、ラビーネに、一度でいいから本物の空を飛ばしてやりたかったのよ」
ロマさんが言うのをきいて、ラビーネが言った。
「私は、このダンジョンの中だけでも充分だよ」
ラビーネは、涙を拭うロマさんに向かって主張した。
「ここでも幸せなんだから!」
「それは、あなたが本物の空を知らないから」
ロマさんは、ラビーネの頭を優しく撫でた。
「本物の空を知れば、きっともっと幸せになれるわ、ラビーネ」
「しかし、第9階層にいるのは、竜神族の者だというじゃないか」
ロマさんの隣に腰かけていた白髪の老人が心配そうに眉をひそめた。
「お嬢ちゃんたちになんとかできるのかね?」
「それは」
俺は、老人に微笑みかけた。
「やってみないとわかりませんから」
「そうかね」
老人が俺をじっと見つめた。
「お前さん、混じっとるのか?」
はい?
俺は、びくんと体を強ばらせて老人の方を見た。
「ふむ。なんか、複雑じゃな」
老人は、俺に近づいてくると俺の目を覗き込んだ。
「だが、もしかしたら、お前さんならこのダンジョンにかけられた呪いを解くことができるやも知れんな」
マジですか?
俺は、老人を凝視してきいた。
「どうして、そんなことがわかるんですか?」
「お前さんの中には、いくつもの力が混ざり込んでおる」
老人が俺にぐっと顔を近づけた。
「1つは、古代エルフの血、もう1つは、何やらよくはわからんが強力な魔力の塊のようなもの。そして」
老人は、そこまで言って頭を振った。
「いや、まさかな。いくらなんでもそんなことがある筈がない」
老人は、それきり黙り込んでしまった。
老人は、俺の中に何をみたのだろうか?
俺は、うつ向いて考えていた。
もしかして『流れ者』としての俺の姿だろうか。