17-16 和解しました。
17ー16 和解しました。
村についた俺たちを迎えたのは、なぜか、クロイツと肩を組んでいる村長のイワノフさんだった。
「お出でくださり、誠に、ありがとうございます、勇者様」
イワノフさんは、ペコリと頭を下げた。
なんですと?
急にへりくだった態度をとるイワノフさんに俺とアル兄は、不信感を覚えていた。
「昨日は、誠に、誠に、申し訳ございませんでした」
イワノフさんは、平謝りに謝った。
「どうか、お許しください、勇者様」
「だから」
俺は、イラつきを押さえていた。
「俺たちは、勇者じゃねぇし」
「まあまあ、メリッサ」
クロイツが妙に上機嫌で俺に話しかけてきた。
「こう言っているんだし、もう許してあげなさいな」
何?
この豹変ぶり。
「俺の仲間たちは?」
俺が聞くと、イワノフさんがため息をついた。
「そのことでございますが」
それからイワノフさんは、延々と村を守ることについての重責やなんやらをぼやきだした。
そして、最後に、あの3人の話になった。
うん。
つまり、話は、こうだ。
あの3人は、子作りを望めるような連中ではなかったのだった。
まず、クロ。
婚礼の儀式の行われる神殿へと連れていこうとすると、クロは、聖獣に変化。
それを見たクロの相手の女子たちがイワノフさんにもう抗議をしたらしい。
いわく。
「私たちに獣の子を産めと言うのですか?」
というわけで、クロは、めでたく婿候補から外された。
次は、アレイアス。
やはり婚礼の儀式の行われる神殿に連れていかれたのだが、彼は、相手の女子たちに言い放った。
「近づくな!近づいたら舌を噛みきって死ぬ!」
というわけで、びびった女子たちにまたまた抗議されたイワノフさんは、仕方なくアレイアスのことも婿候補から外したのだった。
最後のラクアスは、というと。
婚礼の儀式の場に集った女子たちに、彼は、そっと囁いたのだという。
「私は、実は、人に言うことも憚られる病を持っている。美しいあなた方にうつすことが忍びない」
こうして3人ともが無事に婿候補から外されたというわけだった。
マジかよ!
俺が3人が閉じ籠っている神殿へと迎えに行くと彼らは、だっと俺に抱きよってきた。
「「「メリッサーっ!」」」
こうして、俺たちは、エルフの村人たちと和解した。
クロイツとイワノフさんも今回の件でお互いに手を打つことにしたらしく、クロイツのもとにいるエルフの少年たちの中で村に帰る気があるものは戻ってもいいということになった。
というか、クロイツがみんなを村に帰るように説得した。
「あたしは、無理矢理なんて好きじゃないし」
クロイツは、ふっと笑みを浮かべた。
「もちろん、来るものは拒まずだけどね」
こうして村に少年たちが戻ってくることになった。
といっても、姿だけな。
本当の年齢は、みんな爺さんだし。
だが、テオだけは、クロイツのもとに残ると言い張った。
「なんで?」
俺が聞くと、テオは、溜め息をついた。
「だって、僕がいないとあの人、ちゃんと生活していけないから」
マジか?
こうして第7階層は、平和になった。
クロイツは、俺たち一行を次の第8階層への扉へと案内してくれた。
クロイツは、俺たちに自分の知っていることを話してくれた。
「このダンジョンは、第9階層まであるらしいわ。そう、第8階層の責任者が言っていたのをきいたことがあるの。ちなみに第8階層の責任者ってのは、ドラゴンなんだけど、いい子なのよ、これが。ちょっと連絡しといてあげるから、あなたたちのことを出迎えてくれると思うわ」
クロイツは、俺たちを見送ると投げキッスをして寄越した。
「じゃあね、アディオス。あなたたちがこのダンジョンを制覇できるように祈ってるわ。そして、アルムくん、早くあたしを迎えに来てお嫁さんにしてねぇ!」
「いえ、2度と来ませんから」
アル兄は、笑顔で言うと背を向けた。
「ああん、いけずぅ!」
クロイツがテオに押し止められているのを俺たちは、見て見ぬふりをして駆け去った。
俺たちの背後でクロイツが叫ぶ。
「それでも愛してるわよぅ!」