17-11 奇襲ですか?
17ー11 奇襲ですか?
馬車は、城へと続く坂道を上ると城の入り口に横付けした。
テオに促されて、俺とアル兄は、馬車から降りた。
すると、入り口にずらっと並んだ少年たちが俺たちを迎えた。
「ようこそ、クロイツ・ヴァン・シュタイン城へ」
テオが微笑んだ。
俺たちは、テオに案内されて城の客間へと通された。
「では、ゆっくりとお休みください」
その白い壁に囲まれた、乙女チックな豪華な部屋を見回して、俺とアル兄は、居心地の悪さを感じていた。
テオが去ると、俺は、アンティーク調の椅子に腰を下ろして考え込んだ。
クロイツがここの階層の責任者なのか?
だとしても今のこの状況は、まったく奇妙なものだった。
「とにかく、クロたちを助け出さないと」
俺は、イラついていた。
こうしている間にも、クロたちが何かされているんじゃないかと思うと、いてもたってもいられない。
「落ち着きなさいな、メリッサ」
扉が開いてクロイツが現れた。
クロイツは。
深紅のフリフリドレスに身を包み立っていた。
その顔には、一分の隙もなく美しい化粧が施されている。
マジですか?
俺とアル兄は、遠浅の浜辺のように引いていたが、クロイツは、そんなこと気にも止めずに歩み寄ってくると艶然と微笑んだ。
「あなたの仲間たちの身は、まだ、汚されてはいないわ」
ええっ?
俺は、クロイツのことをじっと見つめた。
クロイツは、続けた。
「あの連中は、やることはえげつないけど、プライドは高いから、捕らえたその日のうちに床入りなんてことはしやしないわ。今ごろ、相手を選んで婚儀の用意をしているでしょうね。だから、助けるなら明日の夜」
クロイツは、手に持っていた扇をぱっと開いて口許を隠した。
「床入りの義の頃を狙って村に奇襲をかけるのよ!」
「あの」
俺は、クロイツに訊ねた。
「なんで、あんたは、俺たちを助けてくれるの?」
「そんなの当然よ」
クロイツは、微笑んだ。
「男同士ですもの、助け合わないとね」
はい?
俺は、なおもきいた。
「俺、女だけど」
「いいえ。あなたの心、魂は、男のものよ」
クロイツが答えた。
「あたしたち、まるで、魂の双生児のよう」
そうなんですか?
俺は、アルカイックスマイルを浮かべていた。
何かな?
この感じ。
もう、怒りとか、戸惑いとかを超越した気分。
そう。
悟りかな?




