3-4 王都につきました。
3ー4 王都に着きました。
父様とクルスが代わりの馬車を村で手に入れて戻ってきたのは、それから一時間ほどしてからのことだった。
もう、すでに日は傾きかけていた。
俺たちは、急いで荷物を新しい馬車の方へと積み替えると再び王都へと向かって出発した。
それからは、順調に進んでいったが、俺たちの乗った馬車が王都に着く頃には、すでに辺りは暗くなっていた。
父様は、馬車を急がせた。
馬車は、王都のメインストリートを駆けていった。
馬車の進む前方には、ライトアップされた巨大な王城が見えていた。
その美しさ、壮大さに俺は、思わず息を飲んだ。
大きい。
俺は、馬車の窓から外を見た。
通りは、馬車が何台も行き交い、その脇を人々がせわしなさげに歩いていた。
なんか、みんな、せかせかしてて、嫌な感じだ。
俺は、もう、家へと帰りたくなっていた。
「父様、俺たち、いつ、家に帰れるの?」
俺は、不安になってきて、父様にきいた。父様は、にやりと笑った。
「もう、ホームシックか?メル」
「違うよ!」
俺は、慌てて言った。
「ただ、ここは、なんか、嫌な感じがするから」
馬車は、人通りの少ない住宅地の方へと向かっていくと、その中でも一段と立派なお屋敷の前に停まった。
屋敷の前には使用人たちが数人立っていた。
その内の1人である黒い執事のお仕着せを着た年取った男が馬車の扉を開けてくれた。
父様と母様が先に降りていく。
その執事は、母様に向き合うと感慨深げに言った。
「お帰りなさいませ、クララお嬢様」
「もう、クランツったら、もう、私は、お嬢様じゃないのよ」
母様が笑って言うと、その男は、真面目な顔をして答えた。
「いつまでたっても、あなた様は、私にとっては、小さなレディのままでございます」
クランツは、ちらっと横目で俺の方を見た。
「この方がメリッサお嬢様でございますか?」
「ええ」
母様が微笑んだ。
「お転婆で困ってるのよ。よろしくね、クランツ」
「かしこまりました」
クランツが俺の前にひざまづいた。
「よろしくお願いいたします。メリッサお嬢様」
「お・・その・・よろしく」
俺は、その執事の真摯さに何も言えずにただ、それだけ、ぼそぼそと言った。
クランツは、ニッコリと笑ったけど、目が笑ってねぇし!
「これは、鍛えがいのありそうな方ですな」
何を、鍛える?
クランツは、俺たちを屋敷の中へと迎い入れるとそれぞれの部屋へと案内した。
俺は、その豪華な客間に驚いていた。
ええっ?
10才の子供に、この部屋ですか?
マジかよ!
部屋の中をうろうろとして見物している俺に向かって、誰かが咳払いをした。
そっちを見ると、小柄なメイドさんが立っていた。
「メリッサ様付きのメイドのライラでございます」
「そ、そうなんだ」
俺は、なんだか、眠くなっていて、あくびをしながら答えた。
「よろしく、ライラさん」
「はあ」
ライラは、信じられないものを見るような目をして俺のことを見ていた。
俺は、気にすることなく、メイドの手を借りることもなくドレスを脱ぐと、下着姿になってベッドへと倒れ込んだ。
うん。
ふかふかだ。
俺は、そのまま、目を閉じて眠りに落ちていった。




