17-9 薬を盛られました。
17ー9 薬を盛られました。
「俺は、そういうのは断る!」
クロがきっぱりと言い放つ。
「俺には、メリッサという心に決めた相手がいるんでな」
「「我々も、だ!」」
ラクアスとアレイアスも声をあげた。
「我々も、生涯妻を娶るならその相手は、メリッサだけだと心に決めている!」
ラクアスが応じると、アレイアスも頷いた。
「この村のことは、この村で解決するか、さもなければ、外の世界へ出て婿を探すがいい」
「それができないからこうしてお願いしているのですよ」
イワノフさんが食い下がるが、彼らは、相手にしなかった。
すると、イワノフさんの声のトーンが変わった。
「仕方がありませんな。できれば、こんなことはしたくはなかったのですが」
ガタン、と音がして、俺は、周囲を見た。
ええっ?
クロとラクアスとアレイアスがぐったりとテーブルに倒れ込んでいた。
「何を、した?」
俺が問うと、イワノフさんは、にやりと笑った。
「何、少し、痺れ薬を盛っただけでございます。事がすめば、みなさん、無事にお返ししますよ」
「事って、なんだよ?」
俺がきくと、イワノフさんがくっくっと低く笑った。
「聞くだけ野暮というものでございますよ、勇者様」
なんですと?
「あっ、ちなみに勇者様とそのお供の女性には、特別な薬が盛られておりまして」
イワノフさんが説明した。
「あなた方には、しばらく体の自由がきかなくなる薬を盛らせていただきました」
奴の言う通り、俺は、体が動かなかった。
指も動かせない。
俺は、村の連中に拐われていくクロたちを見つめていることしかできなかった。
ん?
俺は、はっと気づいた。
あれ?
奴等が拐っていったのは、クロとラクアスとアレイアスだけだったような。
アル兄は?
俺が目だけを動かして隣を見ると、そこには、ぐったりしているアル兄の姿があった。
なんで?
俺は、考えていた。
なんでアル兄は、無事なの?
俺が悩んでいるとき、不意に背後に誰かの気配がした。
「静かに」
不意に耳元でその人物が囁いた。
「すぐに、助けてあげるから」




