17-7 変質者にご注意ください。
17ー7 変質者にご注意ください。
クロがぱぁっと明るい笑顔をこちらに向けてきたので、俺は、ちっと舌打ちした。
「とにかく、俺たちは、急いでるんだよ!」
俺は、さっさと第7階層への扉を開くと足を踏み出した。
「まあ、頑張ることだな」
ライナスが呟いた。
「期待して待っているからな、勇者殿」
何が、勇者殿、だ!
俺は、歩き出した。
だが、第7階層は、中に入ってしまうとそこは、光のない真っ暗闇だった。
ラクアスがすぐに魔法で灯りを点した。
辺りは、普通の村の様だった。
いくつもの家屋が立ち並んでいる。
だが、どの家も明かりはついてはいない。
何?
ゴーストタウンかなんかか?
俺は、歩きながら、ふと落ちていた何かの穂のような物を拾って考えていた。
確かに、誰かが、ここにはいるらしい。
それに、なんだか誰かに見られているような気がした。
俺がきょろきょろしていると、不意に頭上から声が聞こえた。
「ふっふっふっ、待っていたのよ、ずっと」
野太い男の声が聞こえて俺たちは、顔をあげた。
空は、暗闇だった。
声は、続けた。
「あなたたちみたいな子猫ちゃんたちが来てくれるのを、あたしは、何百年も待っていたのよ!」
子猫ちゃん?
俺たちは、声の主を探した。
「あっ!あそこ!」
クロの指差した方を見ると、そこには、全裸で空中に浮かんでいる光輝く変態がいた。
「メリッサ!見てはいけない!目が汚れる!」
ラクアスが俺の目を覆い、アレイアスがすばやく短剣を投げた。
ぶすっと何かに突き刺さる鈍い音が聞こえて、同時に悲鳴が聞こえた。
「ギヤァアアアッ!」
どさっと何かが地面に落ちる音が聞こえる。
「こいつめ!」
クロとアレイアスが何かと戦っているらしい物音が伝わってくるが、俺は、相変わらずラクアスに目隠しされていて何が起きているのかもわからない。
「このっ!このっ!」
「変質者が!」
ボスっ、ゴスッ、という何かを殴るような音がして男の声が聞こえた。
「いやぁっ!やめてぇっ!顔は、ぶたないでぇ!」
そして。
俺が目隠しを外された時には、全身を木の葉で覆われたフルボッコにされているマッチョなスキンヘッドの大男がその場に倒れていた。
「ああっ・・こんなに激しいの・・久しぶり・・・」
男がクロの足元へと手を伸ばしてくるのを踏みにじってクロが叫んだ。
「やめろ!触るな!」
「いや・・もう、やめておいてやれよ」
俺が言うと、ラクアスがふっと笑顔を浮かべた。
「メリッサは、優しいからな」
いや。
俺は、心で全否定していた。
優しいとかじゃないし。
「とにかく、こいつのボスのいる場所に案内してもらおうか」
俺は、男が暴れないようにと思って魔法で男の体を縛り上げた。
「いやん!」
大男は、変な声をあげた。
「ちょっと、このくい込みがっ!あぁっ!」
「・・殺れ!」
俺は、クロとアレイアスに命じた。
2人は、素早く男に歩み寄ると男の体を踏みつけた。
「あぁっ!もっと!もっと、踏みつけてぇ!」
「ダメだ!」
「こいつに、攻撃をすると、俺たちになんか、精神的ダメージが!」
マジか?
俺は、魔法で男の声を封じた。
「うぐっ、むぐっ」
男がとろんとした目付きで俺を見つめている。
うわっ!
何、こいつ!
俺は、なんだか背筋がぞぞっとした。
真性の変態だ!
「と、とにかく、ここのボスキャラをやっつけないとな」
そのときだった。
村の家々から人が駆け出してきた。
「ありがとうございます!勇者様!」




