17-3 ショートコント
17ー3 ショートコント
剣聖 ライナスの弟子になることが確約されたクロだったが、ライナスいわく、ここをそう簡単に通すわけにはいかないのだそうだ。
「私も、ここの責任者だからな。なんの抵抗もせずにお前たちを通すわけにはいかんのだ」
ライナスは、にっこりと笑った。
「というわけで」
ライナスは、俺とアル兄とクロに向かって命じた。
「あの2人を殺されたくなければ、お前たちで私を楽しませてくれ」
はい?
俺は、小首を傾げた。
うん?
この人を楽しませる?
「ここは、長いこと訪れる人もなくてな。とても、とても、退屈だったのだ」
ライナスは、俺たちに笑いかけた。
「だから、私を楽しませたくれ。そしたら、お前たちを先に進ませてやる」
そう言うとライナスは、巨大な手のひらの上に座り込み、俺たちをじっと見つめた。
「さあ、何か、面白いことをしてみせろ!さもなければ、あの2人は死ぬぞ」
マジか?
俺は、アル兄とクロを見た。
面白いことだとぉ?
俺の頭は、グルグル回っていた。
こういうときの面白いことって、何だよ?
「はやくしろ」
ライナスは、俺たちを急かした。
仕方がない。
俺は、アル兄とクロを呼ぶと2人の耳元で囁いた。
2人は、俺の話をきくと頷いた。
そして。
「はい、それでは、ショートコント『魔王と勇者』」
俺は、棒読みでそう言うと、アル兄と2人でクロに対峙して叫んだ。
「貴様の命運も今日までだ!魔王よ」
「はっはっはっ」
クロが、棒読みで応じる。
「勇者よ、よく来た。まあ、上がるがいい」
「どこに?」
アル兄がきくと、クロが答える。
「この魔王城へ、だ」
「魔王城へ?」
「そうだ」
クロに招かれて俺たちがクロの側に行くと、クロがまたまた棒読みで言った。
「はい。おめでとうございます。あなた方は、記念すべき100人目の勇者です」
「はい?」
「これは、記念のオブジェと、魔王城の入城無料券1年分です」
「なんや、それ?」
俺は、棒読みで言って、何かを投げる振りをした。
「なんで、あんたの銅像なんかもらわなあかんねん!」
「この辺じゃ、人気あるんですけど」
「マジか?」
「じゃあ、かわりに『魔王饅頭』でもどうぞ」
「はい?饅頭やて?」
俺は、叫んだ。
「ここ、魔界の魔王城やろ?何、温泉みたいなこと言うてはるのん?」
「だって、最近じゃ、人間界じゃ、こういうの流行ってるらしいから」
クロが言ったことに、アル兄が問うた。
「こういうのって?」
「お・も・て・な・し」
クロが言った。
「おもてなし」
「なんやそれ!」
俺とアル兄が突っ込んだ。
「もう、ええわ!」
一瞬、その場に微妙な空気が流れる。




