16- 11 魂の救済ですか?
16ー11 魂の救済ですか?
敵対していた赤龍族の長であるジェリコが急に攻め入ってきたのだという。
「ジェリコは、その圧倒的な力で私たちの村を制圧するとルドリーと私とルドリーの妹を残して村人たちを皆殺しにしていきました。そして、時期長となる筈だったルドリーに呪いをかけダンジョンへと封印したのです」
シャルは、怒りに拳を震わせて話続けた。
「奴は、ルドリーをダンジョンコアとしてあのダンジョンを造りました。そして、残された私と彼の妹に言ったのです。ルドリーを、彼を救いたければジェリコとともに行き、彼の子供を産め、と」
シャルは、涙を流しながら俺たちに訴えた。
「私たちは、ジェリコに彼の城へと連れ去られ、そこで5人の子供を産みました。ジェリコは、彼の子供たちにそれぞれ天魔王の座を与えてこの世界を支配していきました。それが、今のこの世界の礎となっているのです」
「なるほど、9人の天魔王による世界統治の始まりというわけか」
アル兄がシャルに訊ねた。
「でも、それだと後3人足りないけど?」
「いえ。後の3人は、私たちの子供たちの子ですから」
シャルは、複雑そうな表情を浮かべて微笑んだ。
「ジェリコを中心にその子供たちと孫による世界の支配が始まると、私は、ジェリコのもとを離れました。彼を」
シャルは、俺のことをじっと見つめた。
「ルドリーを救うために、私は、この地へと戻ってきたのです」
マジですか?
シャルは、うつ向くとしゃくりあげながら話を続けた。
「奴は、ジェリコは言いました。ルドリーを解放するためには必要なものが2つある、と。1つは、愛する者」
「愛する者?」
ラクアスがシャルに訊ねた。
「なんだ?それは」
「わかりません」
シャルは、涙を拭うと顔をあげた。
「もう1つは、水よりも濃くて薄いもの」
「水よりも濃くて薄いもの?」
俺は、小首を傾げた。
「謎かけかよ?」
「ともかくその2つが揃わなければルドリーを救うことはできないのです」
ええっ?
俺は、シャルにきいた。
「その2つがなければ、例え俺たちがダンジョンを攻略しても意味がないんじゃ?」
「いいえ」
シャルは、頭を振った。
「あれからもう1000年の時間が過ぎてしまいました。もはや、ルドリーを救うことは難しいでしょう。ならば、せめてあなたたちの手で彼の魂を救ってやって欲しいのです」




