16-10 クエスト依頼ですか？
16ー10 クエスト依頼ですか？
「みなさんが本物の勇者かどうかには、興味はありません」
女は、真剣な眼差しで俺たちを見上げていた。
「ただ、その剣を手に入れることができたあなた方であれば、きっとあのダンジョンを攻略できると思って、私は、こうして頭を下げているのです。どうかお願いします。『嘆きのダンジョン』を攻略してください」
はい？
俺は、その女の人に手を伸ばすと立ち上がらせて空いていた椅子をすすめた。
「まあ、落ち着いて。なんで、俺たちにダンジョンを攻略させたいのか話してくれるかな？」
「それは」
女は、しばらく俺たちを見つめて黙り込んでいたが、やがて口を開いた。
「すべては、私の愛のためなのです」
女は、俺たちに話を始めた。
「みなさんは、あのダンジョンがなぜ、『嘆きのダンジョン』と呼ばれているかご存じでしょうか？」
「いや」
俺たちは、頭を振った。
女は、ふぅっと吐息をついた。
「全ては、１０００年前に始まったのです」
女は、俺たちにシャルと名乗った。
俺は、彼女を見つめた。
年のころは、２０代後半といったところだろうか。
美しい緑の瞳をした人だった。
シャルは、唐突に話始めた。
「かつて、この地には、竜神族の村がありました」
「竜神族？」
俺は、思わず訊いていた。
なんか、タイムリーな話題だな。
シャルは、俺の問いにこくりと頷いた。
「そうです。昔、亜大陸・・グラナダ大陸を追われた竜神族の一部族であった青龍族は、このアルゴス大陸に新天地を見つけひっそりと暮らしていたのです」
「そうなの？」
俺は、シャルにきいた。
「その、それで、彼らは・・青龍族の人たちは、今は？」
「残念ながら青龍族は、今では３人のみを残して滅んでしまいました」
「３人？」
「そうです。そして、そのうちの一人が私の婚約者であるルドリーです」
「お姉さんの婚約者？」
「ええ」
シャルは、うっすらと頬を染めた。
「私たちは、かつて婚姻の儀を行うことになっていた婚約者同士でした」
それは、シャルとルドリーにとって人生で最も輝かしい日に起きたことだった。
