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婚約破棄から始まるとんでも異世界冒険譚~黒猫の騎士とポンコツ姫~  作者: トモモト ヨシユキ
16 冒険者生活始めました。
185/216

16-8 勇者の剣ですか?

16ー8 勇者の剣ですか?


トトが変化して白銀色に輝く剣となった。

「これは・・」

ラクアスとアレイアスが息を飲んだ。

『僕は、勇者の剣 トレイトスだ。勇者よ、僕を手に取るがいい』

クロが剣を手にとる。

「これ、いい。俺の、な」

『お前が勇者なのか?』

「いや。俺は、ただの騎士だ」

『なら、僕から手を離せ!僕は、勇者の剣だ!』

「これ、気に入ったから俺が貰っとく」

クロがトトの言葉を無視して宣言した。

アル兄が溜め息をついた。

「売れば高そうなんだがな。まあ、仕方ないか。そんな変な剣、扱いに困りそうだし」

『変な剣って!僕のこと、変って言った!』

トトが怒りの声をあげたが、誰も省みるものはなかった。

ちょっと、気の毒な気もしたが、クロの嬉しそうな様子に逆らおうとするものはいなかった。

4階を攻略したところで、俺は、いったん宿へと帰ることにした。

宿に残してきたイヌのことも心配だったし、何より、染み付いたイービルボアの血の臭いをとりたかった。

宿に戻るとイヌが駆け寄ってきた。

「おかえりなさい!」

うん。

俺は、イヌの頭を撫でてやった。

ほんとにかわいいな、こいつは!

「マルの奴とはうまくやっていたか?」

俺は訊ねた。

俺も忘れかけていたけど、俺たちがイヌを置いて出掛けることにしたとき、不意に、俺の影の中からこのデブ猫が現れやがったのだ。

そして、俺たちは、このデブ猫にイヌを任せてダンジョンへと出掛けたのだった。

イヌは、俺にこくりと頷いた。

「マルは、いい子にしてた」

はい?

俺は、じろりとイヌの足元にいるブタ猫を睨み付けた。

マルは、イヌの影の中に隠れながらにやりと笑った。

なんか、憎たらしい奴だな。

ともかく俺がイヌと一緒に風呂に入って、くつろいでいたら、アル兄たちが帰ってきた。

アル兄たちは、冒険者ギルドでキングイービルボアとその仲間たちを買い取ってもらいに行っていたのだ。

「どうだった?アル兄」

「ああ」

アル兄がにんまりと笑った。

「思ったよりも高額で買い取ってもらえたんで、もうダンジョンには行かなくてもよさそうだぞ、メリッサ」

マジですか?

俺は、少し、ガックリしていた。

「あのダンジョンの最初の攻略者になれると思っていたのに」


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