16-8 勇者の剣ですか?
16ー8 勇者の剣ですか?
トトが変化して白銀色に輝く剣となった。
「これは・・」
ラクアスとアレイアスが息を飲んだ。
『僕は、勇者の剣 トレイトスだ。勇者よ、僕を手に取るがいい』
クロが剣を手にとる。
「これ、いい。俺の、な」
『お前が勇者なのか?』
「いや。俺は、ただの騎士だ」
『なら、僕から手を離せ!僕は、勇者の剣だ!』
「これ、気に入ったから俺が貰っとく」
クロがトトの言葉を無視して宣言した。
アル兄が溜め息をついた。
「売れば高そうなんだがな。まあ、仕方ないか。そんな変な剣、扱いに困りそうだし」
『変な剣って!僕のこと、変って言った!』
トトが怒りの声をあげたが、誰も省みるものはなかった。
ちょっと、気の毒な気もしたが、クロの嬉しそうな様子に逆らおうとするものはいなかった。
4階を攻略したところで、俺は、いったん宿へと帰ることにした。
宿に残してきたイヌのことも心配だったし、何より、染み付いたイービルボアの血の臭いをとりたかった。
宿に戻るとイヌが駆け寄ってきた。
「おかえりなさい!」
うん。
俺は、イヌの頭を撫でてやった。
ほんとにかわいいな、こいつは!
「マルの奴とはうまくやっていたか?」
俺は訊ねた。
俺も忘れかけていたけど、俺たちがイヌを置いて出掛けることにしたとき、不意に、俺の影の中からこのデブ猫が現れやがったのだ。
そして、俺たちは、このデブ猫にイヌを任せてダンジョンへと出掛けたのだった。
イヌは、俺にこくりと頷いた。
「マルは、いい子にしてた」
はい?
俺は、じろりとイヌの足元にいるブタ猫を睨み付けた。
マルは、イヌの影の中に隠れながらにやりと笑った。
なんか、憎たらしい奴だな。
ともかく俺がイヌと一緒に風呂に入って、くつろいでいたら、アル兄たちが帰ってきた。
アル兄たちは、冒険者ギルドでキングイービルボアとその仲間たちを買い取ってもらいに行っていたのだ。
「どうだった?アル兄」
「ああ」
アル兄がにんまりと笑った。
「思ったよりも高額で買い取ってもらえたんで、もうダンジョンには行かなくてもよさそうだぞ、メリッサ」
マジですか?
俺は、少し、ガックリしていた。
「あのダンジョンの最初の攻略者になれると思っていたのに」




