16-6 俺に捧ぐ猪?
16ー6 俺に捧ぐ猪?
「もうすぐ4階への入り口だ!」
アル兄がそう言ったとき、アル兄の背後からスケルトンの兵士が襲いかかってきた。
「アル兄!危ない!」
俺が叫ぶと、アル兄は、振り向きもせずに裏拳でスケルトンを殴り飛ばした。
ガチャンと大きな音をたててスケルトンがバラバラに崩れ落ちた。
アル兄は、4階への道のある重い扉の前に手を伸ばすとそれを押し開いた。
マジか?
もしかして、アル兄、強いのか?
アル兄は、対ボス戦の最中の人々の横をすり抜けるとその奥にある隠された扉の前に立ち俺たちを振り向いた。
「これが4階への入り口だ」
俺たちの背後で戦っているパーティの人たちが わあわあ言ってボスの不死者と戦っていた。
「いいの?あれ」
俺は、背後を指差した。
アル兄がそっちをちらっと見て小声で言った。
「大丈夫だ。彼らは、彼らでやってるし、僕たちは、僕たちでやればいいさ」
アル兄が素っ気なく言って、扉に手をかけた。
金属の軋むような音がして、扉は開いた。
「ここは?」
4階は、植物が氾濫する森のエリアだった。
なんだか、蒸し暑い。
俺は、流れる汗を手の甲で拭った。
と、ここで、アル兄がマップを捨てた。
「ええっ?なんで?」
「このマップは、ここまでしか載ってないんだよ、メリッサ」
アル兄が答える。
「ここからは、自分達でマッピングしていくしかない」
俺たちは、体勢を整えることにした。
まずは、前衛の剣士 ラクアスと暗殺者 アレイアスが先に出る。
続いて、マッパー アル兄と騎士 クロ。
そして、後衛の魔法使い 俺。
この並びで森の中を俺たちは、進んで行った。
しばらくすると、森の奥から巨大な猪、イービルボアが現れた。
「任せろ!」
ラクアスたちが身構えるのに、アル兄が指示を出した。
「毛皮を傷つけるな!急所のみを狙え!」
ラクアスが弱い電撃でイービルボアの動きを止めると、アレイアスが弱点の額を狙って短剣を繰り出した。
どうっと音をたてて、魔物が倒れる。
「やった!まずは、イービルボア1頭だ!」
アル兄が嬉々として短剣片手に獲物に近づくと解体を始めた。
「来るぞ!」
アレイアスが短く叫んだ。
うん。
森の奥から低い地響きが伝わってくる。
「不味い!群れが来る!」
「殺れ!」
アル兄は、解体しながら俺たちに命じた。
「君たちなら大丈夫だろ?殺ってしまっちゃって!」
「簡単そうに!」
ラクアスが舌打ちするのをきいて、クロがにやっと笑った。
「なら、お前は、退いてろ。獲物は、俺がいただく!」
「何?」
「俺は、いっぱい獲物を狩って、メリッサの願いを叶えてやる!退け!邪魔だ!」
クロが言うと、ラクアスとアレイアスが気色ばんだ。
「メリッサのため、だと?」
「なら」
アレイアスが群れへと向かって突っ込んでいく。
「殺るしかねぇな!」




