16-5 ダンジョンへ
16ー5 ダンジョンへ
『嘆きのダンジョン』
それは、ダンジョンが出現して以来誰も今だ攻略者がいないという Sクラスのダンジョンだ。
今まで幾多の冒険者たちが挑み、散っていた伝説のダンジョン。
だった筈、なんだが。
「いらっしゃい、いらっしゃい!ダンジョン名物蒸し団子だよ!」
「あんたたち、ダンジョン土産は買ったのかい?安くしとくよ!」
「勇者の剣を鍛えたドワーフの鍛冶師の鍛えし業物だよ!そこの兄さん、買ってかないか?」
ダンジョン前の広場にはいくつもの屋台が立ち並び、冒険者たちやら、ただの冷やかしの人々やらで賑わっていた。
「何?これ」
俺たちは、絶句したままダンジョン前の喧騒の中を歩いていた。
ダンジョンの入り口の前には、老人が1人立っていた。
老人は、穏和な笑顔をたたえて、俺たちを見た。
「ダンジョンに入るのかね?なら、入場料
1人につき銀貨2枚だよ!」
「高いよ!安くならないの?」
アル兄がきくと、老人は頭を振った。
「この入場料には、ダンジョンの場内のマップの料金が含まれているんでね。命の対価だ。値切るんじゃないよ、お兄さん」
アル兄は、うーん、と唸ってから、老人に言った。
「なら、僕たちは、パーティだからマップは、一枚でいいから、1人銀貨1枚にまけてくれないか?御老人」
「ああ?」
老人は、アル兄をぎろりと睨むと、溜め息をついた。
「いいだろう。特別だぞ。その代わり、苦情も返品もなしだからな」
苦情?
俺は、そこはかとなく不安になっていた。
返品って。
ダンジョンのマップに返品なんてありなの?
アル兄は、老人に金を払うとマップを1枚受け取った。
「行くぞ!みんな」
俺たちは、ダンジョンへと足を踏み入れた。
ダンジョンの中は、外に比べるとほんのりと暖かかった。
それに壁には、明かりがつけられていてけっこう明るかった。
アル兄は、俺たちの方を見た。
「1階から3階までは、もう狩り尽くされてて 何もめぼしいものはない筈だ。俺たちが目指すのは、4階だ!」
俺たちは、他の冒険者たちを横目に4階を目指して歩き出した。




