16-2 本当にいいんですか?
16ー2 本当にいいんですか?
「無茶言わないでください!カザフさん」
お姉さんがきっと男を睨み付けた。
「また、勝手なことを!今度、新米冒険者候補をいじめたらギルド長に首にされちゃいますよ!」
「かまやしねぇよ」
カザフさんとやらは、ニヤリとニヒルな笑いを浮かべた。
「ちょうど退屈してたとこでな。お前たち、ついてきな」
「ちょ、カザフさん!」
カザフさんは、お姉さんを無視して俺たちをギルドの中庭にある闘技場へと案内した。
「お前たち、ギルドの登録試験を受ける奴が、なぜ、めったにいないのかわかるか?」
「ええっ?」
俺たちは、顔を見合わせた。
「試験を受けるのは、めんどくさいからなんじゃ?」
ラクアスが答えると、カザフさんは、おっかない笑顔を見せた。
「バカか?めんどくさいだけで誰が金貨2枚も払うっていうんだ?」
はい?
俺は、ちらっとみんなの方を見た。
「えっと、じゃ、なんで?」
俺がきくと、カザフさんがにやっと口許を歪ませた。
「みんな、命が惜しいからだ」
ええっ?
俺たちは、ハトマメでアル兄を振り返った。アル兄は、にこにこと笑って頷いた。
そうなの?
俺が、信じられないという表情を浮かべるのを見て、カザフさんが勝ち誇ったように言い放つ。
「いいか?ギルドの登録試験では、何が起こっても罪には問われることはねえんだ。つまり、このAクラス冒険者である俺、雷鳴のカザフにお前ら、ひよっ子どもが捻り潰されようともなんの問題もないわけだ」
カザフさんは、親切にも説明してくれた。
「お前らも、悪いことは言わねぇ。今からでも、試験は止めて、金貨を払って冒険者になることだな」
「そうなの?」
俺は、ラクアスたちの方を見た。
みんな、やる気十分だったけど、俺は、できれば荒事は避けたかった。
「穏やかじゃないなぁ」
「ほんとに」
クロが神妙に頷いた。
「まったく、死に損だよな、おっさん」
「そうだろうが、わかったか?ガキどもが」
カザフさんは、影のある微笑みを浮かべて俺たちを見た。
「それでも、かまわんならみんなまとめてかかってこいやぁ!」




