15-11 相部屋ですか?
15ー11 相部屋ですか?
俺たちは、村にひと晩止めてもらって、翌日には、村から半日ほど行ったところにある宿場町ダリオンへと向かった。
ダリオンは、ダンジョンを有する有名なダンジョンシティだ。
ダンジョン名『嘆きの迷宮』という、中級から上級者向けのダンジョンであるその迷宮は、冒険者たちの間では、知られた存在だった。
街の入り口には、警備の兵士たちが立っていて、町へと入るのに入場料金を徴収していた。
幸いにも、アル兄がいくらか現金を持っていたから、俺たちは、なんとか無事に町へと入ることができた。
町は、大きさのわりに人が多くて、活気に溢れていた。
この多くがよそからやって来た冒険者たちだった。
俺たちは、ダリオンに入るとまず宿屋を探すことにした。
だが、ダリオンは、ちょうどダンジョンの祭りの頃で宿屋は、どこもいっぱいだった。
俺たちは、町の外れにある小さな傾きかけた様な宿屋『踊る小鹿亭』に宿をとった。
しかし、繁盛期のために二部屋しか空いてなかったので、俺とイヌとクロ、アル兄とラクアス、アレイアスという部屋割りになった。
「すまないねぇ、あんたたち」
宿屋の女将は、小柄でよく太った気持ちの良さそうな女だった。
この宿屋は、その女将と娘の同じく小柄なちょっとかわいい女の子で営んでいるようだった。
2人は、俺たちを2階にある続き部屋へと案内した。
「風呂は、共同で一階にあるからね。夕食は、後小一時間もすればだせるけど、先に風呂に入ったらいいさぁ」
女将は、俺たちに言った。
俺はイヌと一緒に先に風呂に入ることにした。
本当は、生活魔法で清潔を保つことはできるのだが、そこはやはり前世は風呂好きの日本人だけあって、俺は、風呂に入りたかった。
俺は、イヌと風呂場に行くと、イヌの脱いだ服と俺の服をまずは、生活魔法できれいにした。
それから、2人で風呂へと入った。
俺は、イヌの体を洗ってやった。
イヌは、やせっぽちで全身が傷だらけだった。
俺は、わかってはいたけど、それでもはっと息を飲んだ。
イヌの体を洗ってやりながら、俺は、この小さな子供の生きてきた人生の過酷さを思っていた。




