15-10 方向を間違えました?
15ー10 方向を間違えました?
「さあ、用意はいいか?」
俺の言葉にラクアスとアレイアスが頷いた。
俺たちは、森へと向かって身構えた。
俺は、1番前に立ちその後ろにラクアスとアレイアスが立って構えた。
2人は、俺の頭上を狙ってそれぞれ炎と雷を放った。俺は、2人の放った魔法を受けとめるとそれを増幅して前方の森へと向かって放出した。
「いっけぇっ!」
俺が増幅した魔法が森を切り開いていく。
ずがががっ!
地響きが響き渡り、辺りが揺れた。
魔法の炎に森が削り取られていく。
一呼吸つく間に、森の遥か彼方まで続く道が開かれた。
「今だ!みんな、走れ!」
脱兎のごとく俺たちは、駆け出した。
その間にも森は、再生していき俺たちを逃がさないようにとその触手を伸ばしてくる。
俺たちは、それを切り落としながら走り続けた。
俺たちが走り抜けた直後には、もう森は閉じて元通り、全てを拒むように繁っていた。
俺たちは、森の外に倒れ込んで乱れた呼吸を整えようとしていた。
そんな俺たちを見下ろして、1人の老人が呆れたように立っていた。
「あれまあ、あんたたち、この森から出てきたんかい?」
老人は、森の近くにある村の住人だった。
ミノという村の住人である老人は、俺たちを村へと連れ帰って家で休ませてくれた。
老人は、アナンと名乗った。
「ほんに無理をなさる。あの森を横切って来られるとは」
老人は、俺たちに水とカチカチのパンと干し肉を与えてくれた。
「こんな村じゃで、食べ物といってもこんなもんしかないが」
「いえ、ありがとうございます」
アル兄が営業スマイルを浮かべた。
「それより、ここは、ガーランド公国のどの辺になるのですか?」
「どの辺?」
老人は、頭を傾げた。
「どの辺もこの辺も、ここは、ロシナンテ共和国の端っこで、ガーランド公国なんてとこじゃないがのぅ」
はい?
俺たちは、みなお互いを見つめていた。
確かに、俺たちは、ガーランド公国へと向かっていた筈なのに?
ロシナンテ共和国といえば、ガーランド公国とイーゼル王国の境界にある小さな国だった。
「どうやら、森の中で我々は、方向を見失っていたようだな」
アル兄が呟く。




