15-9 会わせたくない?
15ー9 会わせたくない?
メリッサ
誰かの呼ぶ声が聞こえていた。
「メリッサ」
「ん・・」
俺は、ゆっくりと目覚めていった。俺の目の前に巨大な猫になったクロの顔が覗き込んでいた。
「どうしたんだ?メリッサ。なんか、うなされていたぞ」
俺は、心配そうに見つめるクロを見つめ返していたが、やがて、ぷぃっとそっぽを向いた。
「なんでもない」
俺は、立ち上がるとクロの体から離れて外へ出るとアル兄の方へと歩いていった。
「アル兄」
アル兄は、クロから少し離れた木の根本にもたれ掛かって眠っていた。
俺は、アル兄の隣に腰かけるとアル兄の寝顔を覗き込んだ。
長い睫毛の先までが美しい黄金色だった。
俺は、アル兄の美しさに胸を打たれていた。
アル兄は、きれいだ。
俺は、アル兄を見つめて囁いた。
「アル兄、起きて」
「何?メリッサ」
アル兄は、ゆっくりと瞳を開いた。
青い瞳に俺の姿が写っている。
アル兄は、俺に優しく微笑む。
子供の頃に、俺は、よくアル兄のベッドの中に潜り込んでアル兄の寝顔を見つめていた。
それは、アル兄が美しくって、今にも消えてしまいそうで不安だったからだった。
今、再び、俺は、それを感じていた。
「アル兄、俺たちは、ずっと一緒、だよね?」
「ああ」
アル兄がいたずらっぽく笑った。
「ずっと一緒だ、メリッサ」
俺は、ほっと安堵の吐息をつくと、アル兄の肩へともたれ掛かって夜空を見上げた。
「ねぇ、アル兄」
「なんだ?メリッサ」
「ルーラに会わないようにこの森を出て、イヌを安全な場所につれていくことは可能かな?」
「ルーラに会わないように?」
アル兄は、しばらく考えてから答えた。
「そりゃ、できないことはないけど。いったい、どうしたの?メリッサ」
「うん・・」
俺は、俺の中に眠っている賢者の石の化身であるラニに会ったことをアル兄に話した。
「よくはわからないんだけど、イヌをルーラに会わさない方がいいみたいなんだ」
「賢者の石が?」
アル兄は、眉をひそめた。
「イヌをルーラに会わせるなって?」
アル兄は、俺の方をはたっと見た。
「もしかして、今度のことは、天魔王たちが絡んでいるのかな?」
「わからない」
俺は、声をひそめる。
アル兄は、顎にその形のいい指先をあてて考えていたけど、立ち上がった。
「アレイアス!」
俺たちは、夜がまだ開けきらぬうちに起き出すと、ガーランド公国へと向かって出発することとになった、




