15-7 夜営
15ー7 夜営
夜になると小雪が舞った。
森の中は、きんと冷えていて、静まり返っていた。
周囲の温もりを集めている 結界内は、外に比べればほのかに暖かかったが、それでも肌寒かった。
イヌは、本物の子犬のように俺にすり寄ってきて眠っていた。
その小さな温もりに俺は、思わず微笑んでいた。
アレイアスとラクアスが俺たちに上着を差し出して、そっと肩にかけてくれた。
「ありがとう、だけど、お前たちも」
俺は、断ろうとした。
だが、2人は俺の言葉を遮った。
「男に恥をかかすなよ」
そうなの?
俺は、口を閉じて上着を引き寄せた。
暗くなると森の隙間から覗く夜空が美しかった。
こんなきれいな夜空を、俺は、最近見ていなかったことに気づいた。
俺は、 イヌを抱いてそっと目を閉じた。
不意に、聖獣化したクロが俺たちのことをその毛並みで包み込んだ。
ふかふかの クロの毛並みは、暖かくってなんだか、懐かしい思い出が甦ってくる。
幼かった頃に1人森に捨てられていた俺を暖めてくれたクロ。
ぼんやりと考えていると、イヌがもぞもぞと動いて何か呟いた。
かあさん
俺は、胸が痛んだ。
こんな子供が1人で奴隷として使われていたんだ。
口にするのも憚られるようなことだってされてきたのに違いない。
俺は、そっとイヌを抱き締めた。
「あったかい」
イヌが呟いた。
イヌは、俺が出会ってから初めての幸せそうな微笑みを浮かべている。
ぎゅっと俺にしがみついてくる柔らかな感触に、俺は、心を打たれていた。
もしも、俺に妹がいたらこんな感じなのかな?
イヌがほぅっと吐息をつく。
かわいい!
俺は、なんか胸がキュンとなっていた。
この子は、もう、幸せになってほしい。
この子が泣かなくてすむ世界になればいい。
俺は、 ふと考えていた。
この子にも俺のように父様や母様に愛される思い出を作ってやりたい。
そうだ。
母様に頼んでイヌのことをうちの養女にしてもらおう。
俺は、そんなことを思いながら、クロの柔らかな毛並みにくるまれてうとうとと眠りに落ちていった。




