15-6 食い倒れの国ですと?
15ー6 食い倒れの国ですと?
「ここは、迷いの森だ」
クロが答えた。
「迷い込んだ旅人を取り込み食らう魔物だ。いわば、俺たちは、今、魔物の胃袋の中にいるんだ」
マジかよ!
「でも、森全体を焼き払えばよくね?」
俺が訊ねると、クロが頭を振った。
「この森は、魔力も吸収するからな。焼き払うとかは、無理だ」
なんですと?
俺は、森の中を見渡した。
魔法が吸収されちゃうの?
「この森は、出るのが難しいけど、俺たちなら生き残ることはそんなに難しくはない」
クロは、俺に微笑んだ。
「ルーラの救助を待とう」
周囲が暗くなってくる。
俺たちは、薪を集めて夜営の準備をした。
どこかで、魔物の遠吠えが聞こえた。
イヌが、真っ青になっている。
俺は、結界をはって、その中心で薪を燃やした。
薪でアレイアスが、魔物の肉を焼き始めた。
アル兄が持っていたマジックバックの中から一握りの塩を取り出した。
「これ、使って」
「ありがたい!」
アレイアスは、塩を肉に振りかけた。
いい匂いが漂い始め、イヌの腹がぐぅっと鳴った。
俺たちは、薪を囲んで座ると、黙って肉が焼けるのを待っていた。
しばらくしてアレイアスが木の小枝に刺した肉をイヌに差し出した。
イヌは、ちょっと迷ってからそれを受けとると、ふうふう吹いてからそれにむしゃぶりついた。
美味しそう。
俺も、唾を飲んだ。
「メリッサも、食え」
アレイアスが俺にも焼けた肉を差し出した。
俺は、それを受けとるとかぶりついた。
うん。
「美味しい!」
俺は、受け取った肉をぺろりと食べてしまった。
「塩味も美味しいけど、胡椒があればなぁ」
俺がぼそっと呟くと、それを聞き付けたアル兄がきいた。
「胡椒?香辛料のことか?」
「うん」
俺は、頷いた。
「なんか、この国の食べ物は、美味しいけど少し、味が薄いよね」
「そうだな」
アレイアスが頷いた。
「俺の国の料理の方が確かにうまいな」
「ほんとに?」
俺が問うとアレイアスが応じた。
「ああ。俺の国は、旅人たちから食い倒れの国とも呼ばれているぐらい、料理が旨い国なんだよ」
マジか。
俺は、胸がドキドキしていた。
行ってみたい!




