15-4 船を降りるんですか?
15ー4 船を降りるんですか?
もちろん船長代理であるライは、イヌを殺そうとした。
だが俺には、それを見過ごすことはできなかった。ラクアスとアレイアス、それに船のオーナーであるアル兄も俺たちを擁護してくれた。
「なら、あんたたちには、こいつと一緒に船を降りてもらう」
ライは、俺たちに残酷な決断を述べた。
「船長代理として船を救うためには、そうせざるを得ない」
「そんな、無茶苦茶だ!」
ラクアスは、抗議した。
「せめて、どこかに寄港して下ろしてくれ」
だが、ライは、頭を振った。
「船が寄港できる港を探している間に、俺たちは全滅だ。悪いことは言わない。その子供を船から捨てるしかないんだ」
「なら、我々もここで船を降りる」
アレイアスが毅然とした態度で言った。
ライは、溜め息をついた。
「この子供のために、か?あんたたちは、バカだ」
というわけで、まず、アレイアス。そして、ラクアス。アル兄とクロもそれに続いた。
最後に俺とイヌが飛び降りることになった。
船の回りには空の鮫であるエアシャークの群れが集まってきていた。
「ああ。これは、先に飛び降りた連中もヤバイな」
ライが俺に聞いた。
「あんたは、やめとくか?姫様」
「行く!」
俺は、きっとライを睨んだ。
「行くに決まってるだろうが!」
「ああ?」
ライがにやりと笑った。
「おっかねぇ姫様だな。だが、俺は、嫌いじゃねぇぞ」
震えているイヌを抱いて板の上を歩いていく俺の背にライは、言葉を投げた。
「また、無事に会えることを祈ってるぜ、姫様。そのときは、俺の女にしてやるぜ」
「要らねぇよ!」
俺は、叫んだ。
そして、俺たちは、下へと飛び降りた。
俺は、イヌを抱いて落下しながら襲ってくるエアシャークを撃退していた。
身体強化の魔法をかけた拳でエアシャークの額を殴る。
すると一瞬エアシャークが意識を失う。
その隙をついて俺は、飛翔の魔法を使って空を飛んだ。
犬は、怯えて俺にぎゅっとしがみついてくる。
「死にたくない!死にたくないよぉ!」
「大丈夫、だ。イヌ」
俺は、イヌを強く抱いて囁いた。




