14-5 王子様現る?
14ー5 王子様現る?
どうやらあのエリンさんの聖獣、犬のルイーゼは、水を別の物質へと変化させることができるようだった。
そうして、爆発させてあの地獄の番犬ケルベロス、じゃなくってケルベスから身を守ったようだった。
すごいな、ルイーゼ!
恐らく、聖獣としての力は、ルイーゼがこの中では最強のようだった。
ルーチェ嬢の聖獣は、戦闘意欲がなく、俺の聖獣は、まったくやる気がない。
というわけで、サイナス辺境伯の婚約者として選ばれたのは、エリンさんということになった。
うん。
それでいいんじゃね?
俺も、ルーチェ嬢も、納得していた。
「君たちには、今回のことで迷惑をかけてしまったね。すまなかった」
幸せそうなサイナス辺境伯は、俺たちに申し出た。
「どうか、最後に舞踏会を催すから楽しんでいって欲しい」
俺は、もう帰りたかったけど、サイナス辺境伯がアル兄のことも招待するというものだから仕方なく残ることにした。
サイナス辺境伯は、意味ありげに笑った。
「それにパーティには、前途有望な若者たちをたくさん招いている」
「あら。なら、私も参加させていただきますわ」
ルーチェ嬢があくまでも淑やかに微笑んだ。
「殿方を退屈させては何もよいことがありませんものね」
そうして、3日後にサイナス辺境伯とエリンさんの婚約発表のある舞踏会が盛大に開かれることとなった。
俺は、アル兄と仲直りをしようと考えていた。
まあ、あのキスのことは置いといて、だ。
きっと、アル兄もつい勢いでしちゃったのに違いないしな。
一応、ばあちゃんにも今回の婚約者選びの件を報告した。
ばあちゃんは、「そういうこともある。次、がんばれ」といった内容の手紙をくれた。
俺としては、もう、なんか、どうでもよくなってしまったんだが。
母様の言ったように、いつか、その時が来れば俺もきっと。
そう思うことにしたんだ。
今回のことで1番割りの合わない思いをしたのは、アリシア嬢だった。
「私、昔からサイナス様のことがすきだったのよ」
アリシア嬢は、俺たちに泣きついてきた。
「お嫁さんにしてもらいたくって頑張ったのに!」
「きっと、アリシア様に相応しい素敵な男性が現れますわ」
ルーチェ嬢が慰めの言葉をかけた。
アリシア嬢は、涙を拭った。
「そうかしら?」
「そうよ。きっと、素敵な王子様があなたにも現れるわ」
そう。
王子さまたちは、現れたのだ。
俺たちの前に。




