14-4 メスだったの?
14ー4 メスだったの?
アリシア嬢は、エリンさんに高飛車に訊ねた。
「ちょっと、本当にその生き物は、聖獣なんですの?もしかして、その辺の犬を連れてこられたのではなくて?」
「えっ?」
エリンさんがさっとその犬を庇うように抱き上げて前に連れていった。
2人を前にして水晶玉は、青く美しい輝きを称えてひび割れた 。
「これは、水属性。しかも、かなりの魔力を持っているようですわね」
ラートリアさんが、感嘆するような声をあげた。
アリシア嬢の顔色が変わった。
「嘘!嘘よ!あんな情けないヨロヨロしてる不細工な犬擬きが私のケルベスより魔力を持っているなんて、あり得ないわ!」
アリシア嬢が叫ぶと、後ろに控えていた地獄の生き物系のものが低い唸り声をあげた。
アリシア嬢は、身に付けていた手袋を脱ぐと、それをエリンさんの顔へ向かって投げつけた。
「わっ!」
エリンさんは、驚愕して手袋を握りしめて立ち尽くしている。
アリシア嬢は、エリンさんのことをバカにするように笑った。
「決闘よ!」
マジですか?
俺とルーチェ嬢は、顔を見合わせた。
ラートリアさんが溜め息をついた。
「仕方ないですわね」
俺たちは、ラートリアさんの指示で場所を中庭へと移した。
「それでは、これからアリシアさんとエリンさんの決闘を行います。決闘の方法は、お互いの聖獣同士で戦っていただきます。どちらかが動かなくなる、もしくは、戦闘放棄をしたらその方が負けとします。よろしいから?」
ラートリアさんの説明を聞いていたアリシア嬢とエリンさんが頷いた。
ラートリアさんが手を振り上げる。
「では、よろしくて?」
2人が身構える。
ラートリアさんが手を下ろした。
「始めっ!」
その声と同時にアリシア嬢の聖獣、ケルベスがエリンさんたちへと襲いかかった。
やばっ!
俺は、舌打ちをした。
あいつ、エリンさんまで標的にしている!
俺は、すぐにデブ猫に命じた。
「いけっ!早く、あいつを止めるんだ!」
が。
俺のデブ猫は、動こうとしないどころか、呑気に喉をグルグル鳴らしていた。
マジでか!
こいつ、後で、家畜の餌にでもしてやる!
そう俺が思ったとき。
爆発音が響き渡り、黒い巨大な悪魔の生物が吹き飛んだ。
はい?
俺は、ハトマメ状態でエリンさんたちを見た。
なんだ?
「これは・・」
ラートリアさんがその場にヘナヘナと座り込んでいるエリンさんとその前によろめきながらも立ちふさがっているあのブサカワ犬の方へと歩み寄った。
「どうやらこの戦いの勝者は、エリンさんとその聖獣のようね。ええっと、その聖獣の名前は?」
「ルイーゼ、です」
ええっ?
俺は、その真実に打ちのめされていた。
この犬、メスだったの?




