14-1 これも、聖獣ですか?
14ー1 これも、聖獣ですか?
「実は、この北の地を守護する聖獣が病のために種に戻ってしまったの」
ラートリアさんが俺たちに話した。
「だから、兄様の婚約者の選定にあわせて、聖獣を生み出せる力を持つ聖女の候補としてあなたたちを集めたのです」
はい?
俺たちは、 ハトマメ状態だった。
何、それ?
聖女ですと?
俺は、すり寄ってくるデブ猫を担ぎ上げラートリアさんの話を聞いていた。
今回、聖獣の種を孵せたのは、俺の他に2人、ルーチェ嬢とアリシア嬢だけだった。
ルーチェ嬢の連れている聖獣は、妖精タイプの可愛らしいフワフワと辺りを漂うもので、アリシア嬢のは、地獄から来た猟犬みたいな黒い大きな犬だった。
これって、それぞれの個性がでてるわけですか?
アリシア嬢がラートリアさんに訊ねた。
「では、これは、サイナス辺境伯の婚約者選びではなかったのですか?」
「いいえ」
ラートリアさんがにっこりと微笑んだ。
「あなたたちの中から、サイナス辺境伯の婚約者を選ぶことは変わりませんわよ」
「でも、聖女候補だと仰ったではないですか」
アリシア嬢に詰め寄られてもラートリアさんは、少しも怯むことなく答えた。
「聖女でも、婚約者にはなれますもの」
マジですか?
「とにかく」
ラートリアさんが、咳払いをした。
「サイナス辺境伯の婚約者候補は、あなた方3人というわけですわね」
「ちょっと、待った!」
そのとき、サイナス辺境伯が1匹の犬を掲げて部屋へと駆け込んできた。
「その婚約者候補にもう1人加えてほしいんだ、ラートリア」
「はい?」
ラートリアさんがサイナス辺境伯を冷ややかに振り返ると辺境伯は、興奮した様子で1匹のなんだか薄汚れた感じのする犬と1人の女の人を連れて部屋へと入ってきた。
「まあ、なんですの?その・・犬は?」
ラートリアさんが、半笑いできくと、サイナス辺境伯は、答えた。
「これは、聖獣だ。彼女、エリンが育てた」
「聖獣ですって?」
ラートリアさんが、まじまじとその犬を見つめた。
その犬は、だらんとサイナス辺境伯の腕に抱かれていたが、なんとも情けない様子の茶色の犬だった。




