2-7 ケーキを作ろう!
2ー7 ケーキを作ろう!
シュナイツの話を聞いていたアル兄が、父様と俺に向かって頷いた。
うん。
アル兄の鑑定によるとシュナイツは嘘をついてはいないようだ。
父様は、シュナイツに答えた。
「わかりました。ちょっと早いですが、メリッサをこの冬の社交シーズンに社交界デビューさせることにします」
マジかよ?
俺は、うんざりとした表情を浮かべて父様を見た。
父様は、にやりと笑った。
「まあ、メリッサにもいい経験になることでしょうし」
そうして用をすませたシュナイツは、急いでいるとかで、すぐに、ワイパーンでサイナス辺境領へと飛び立っていった。
奴を見送った後、ドレスを動きやすい服に着替えてから、俺は、調理場へと向かった。
うん。
なんか、悪い予感がする。
母様は、社交界デビューに向けて新しいドレスを作らなくては、と張り切っていたが、俺とアル兄は、胸騒ぎを隠せなかった。
アル兄は、カシャカシャと俺が鍛冶士に作らせた魔力で動く泡立て器を使って卵白を泡立てながら言った。
「あの国王がわざわざ招いてくるなんて、何かあるとしか思えないな」
俺は、小麦粉をふるいにかけながら頷いた。
「絶対に、おかしいよな。何をたくらんでいるのかは、知らないけど、なんかあるよな」
俺たちは、母様の誕生日パーティーのためのケーキを3種類用意していた。
まずは、ロールケーキ。
中には、たっぷりの生クリームと栗とよく似たヴィッカの実の甘煮が入っている。
そして、ムートの蜜をたっぷりと使ったシフォンケーキ。
最後に、赤いイチゴのような味がする、ルルカの実ののったショートケーキ。
「これだけあれば、十分だろ」
アル兄が残った生クリームを指先ですくってペロリと舐めた。
「うん。うまい!ほんと、こんなうまいもの考え付くなんて、お前は天才だよ、メル」
「それは、『想像辞典』のおかげだし」
俺は、少し、照れていた。
「チョコレートがあれば、もっといろいろできたんだけど」
「チョコレート?」
アル兄の瞳がきらんと輝いた。
「それは、どんな食べ物なんだ?」
「うーん」
俺は、悩んでから言った。
「そのうち、作れないか考えてみるよ」
俺は、半笑いで答えていた。
ほんと、ぼうっとしてるようでアル兄は、商売に関しては、すごいんだよ。
売れそうなものには、びびっとくるらしい。