13-4 ご近所さんですか?
13ー4 ご近所さんですか?
どこからか軽快な音楽が流れてきて、人々は、ダンスを始めた。
「お手をどうぞ、ネイジア様」
クロが言って、俺の手をとった。
俺たちは、手を取り合って礼を交わした。
リズムにあわせて2人で踊ると、楽しくなってきて、俺は、微笑んだ。
「やっと、笑ってくれた」
クロが囁いたので、俺は、ぷぃっと横を向いた。
「お前なんか、大嫌いだ!」
「それでも、いい」
クロは、躍りながら俺に向かって呟いた。
「俺の思いは、前世からの筋金入りなんだからな」
あの黒猫のことを思い出して、俺は、笑った。
いつも、俺から餌を掠め取っていったあの黒猫。
「黙れ!駄猫が!」
俺は、クロに向かって言った。
「お前のことなんて」
「俺のことなんて?」
俺は、クロの金色の瞳を見上げた。
「お前のことなんて、ただのペットなんだからな!」
「マジかよ?」
俺たちは、躍り続けた。
曲が終わって、クロが呟いた。
「アルムの奴、遅いな。ちょっと探してくる」
「わかった」
俺は、一人、取り残されてしまった。
うん。
これが、壁の花って奴なのかな?
俺は、一人で壁を背に立っていた。
「失礼、お嬢さん」
振り向くとそこには、背の高い黒髪の思わず目を奪われてしまうほどの深い緑の瞳の美しい 美男子が立っていた。
「どなたでしたっけ?」
「私は、北の辺境伯、ヴィクトール・アリエスタ・サイナスと申します」
ええっ?
俺は、耳を疑った。
父様の領地の近くの、あのサイナス辺境伯ですか?
「サイナス辺境伯は、意地の悪いじいさんだとばかり」
わわっと俺は、口を押さえた。頬が熱くなる。
「す、すみません」
「いいんですよ」
サイナス辺境伯は、朗らかに笑った。
「そう伝わっていましたか。確かに、コンラッド領辺りでは、そう噂されているとかきいたことがありますが」
まずい!
俺は、顔がひきつった。
バレてる?
「あのコンラッド領には、かつて『金の鬼姫』と呼ばれたじゃじゃ馬姫がいましてね。たいそう美しい姫君でしたが・・もちろん、あなたほどではないですがね」
うん?
俺は、焦っていた。
俺、ヤバイんじゃね?




