13-1 社交界デビューですか?
13ー1 社交界デビューですか?
学園祭が終わると王都に冬がやってくる。
冬は、イーゼル王国の社交の季節だ。
特に、『花嫁クラス』の女子たちは、冬期休暇を前に色めき立っていた。
どこそこの仕立て屋のドレスがどうとか、こうとか。
俺はというと、12才になったばかりだったけど、ばあちゃんの命令でこの冬、社交界デビューすることになった。
いや。
俺は、社交界デビューは、2度目だった。
1度目は、最悪の結果に終わっていたけどな。
だからという訳ではなかったけども、俺は、気が進めなかった。
でも、ばあちゃんいわく、『いい品物は売れるもの』だそうだ。
つまり、俺にも、そろそろ婚約者の1人も見つけなくてはいけないということだった。
そういうわけで、この冬期休暇は、ガーランド王国に帰らずにイーゼル王国で過ごすことになった。
サイと一緒に、俺は、王都で1番とかいう噂の仕立て屋に来ていた。
下着姿で採寸していたんだが、俺は、なんだか体調が悪かった。
理由は、わかっている。
クロのせいだった。
学園祭の最終日の夜に、クロがあんなことをしなければ。
俺は、あれ以来、あの駄猫とはいっさい口をきいていなかった。
あいつ、俺が無視してたら、ナノのこと相手しながらちらっと俺の様子をうかがったりしていたな。
ナノはナノで最近、勝手に出掛けることが度々あったんだが、なんか様子がおかしい。
うん?
採寸中に俺は、急に下腹が痛くなった。
なんか。
変。
何かが、俺の内腿を伝って流れ落ちていく感じがした。
「メリッサ様?」
サイが駆け寄ってくる。
俺は、ふらっと意識が遠退いていくのを感じていた。
気がつくと、俺は、馬車の中にいた。
俺は、きちんと服を着せられていて、馬車の中で横たわっていた。
サイが俺に膝枕をしてくれていて、ずっと俺の髪を撫でてくれていた。
「サイ・・俺・・どうなっちゃうの?」
俺がきくと、サイは、優しく微笑んだ。
「大丈夫ですよ、メリッサ様。心配しなくっても」
サイの言葉は、まるで、眠りの魔法のように俺を眠らせていった。
サイは、眠りに落ちていく俺にそっと囁いた。
「これから、あなたは、女になっていくのですね、メリッサ様」




