12-10 芸は、身をたすく?
12ー10 芸は、身をたすく?
姿を表した俺を見て、講堂内にいた女子たちがざわめいた。
「まさか、これほどとは思いませんでしたわ」
「ステキです!ガーランド様」
うん。
女子に誉められて、俺は、満更でもなかった。
だって、俺、ほんとは男だし。
「さあ、ローザの騎士の恋する乙女たちの登場ですわよ!」
レティが言って、講堂の後ろに張り巡らされていたカーテンが一斉に開かれた。
そこには、色とりどりの豪奢なドレスに身を包んで美しく化粧を施された男子たちが立っていた。
「どうかしら?どの乙女も美しいでしょう?」
レティがうっとりと4人の姿を眺めている。
なんか、微妙に口数が少ない男子たち。
そして、男装の俺。
うん。
よかった。
俺は、生まれて初めて男でなくってよかった、と思っていた。
あんな目にあわされたら、恥ずか死にそうだ。
複雑げな表情の男子たちを見て、女子たちは、ほぅっと溜め息を漏らしている。
確かに、みんな、よく化けてるな。
特に、クロノ。
また、変なファンができそうだな。
これだけすれば、もう、満足だろう。
だけど。
「なんか、物足りないですわね?」
クリスが呟いた。
「なんか、もっと、こう、インパクトのあるものが必要ですわ!」
はい?
俺と男子たちは、ぎょっとしてクリスの方を見た。
「そうですわ!」
サラが声をあげた。
「みんなで吟遊詩人たちの吟う歌を演奏して吟ってみてはどうかしら?」
「演奏?」
クロがゲッという表情を浮かべる。
「無理だぞ」
「私もギータぐらいしか演奏できないぞ」
ラクアスが言った。
ギータとは、7本の弦のあるハープみたいな楽器だ。
すると、アレイアスも言った。
「私もハープぐらいしか演奏できないが・・」
ハープというのは、ピアノのことだ。
すごいな、みんな。
俺が感心しているとさらにクロノがおずおずと言った。
「俺は、ティーダを少しなら」
マジか?
俺は、男子たちの器用さに驚いていた。
俺なんて、子供の頃、少し、ハープを習わされたが、すぐに母様が諦めることになった。
ちなみにクロノが弾けるといってるティーダとは、チェロのような大きな8本弦のある楽器だった。
本当に、みんな、楽器の演奏ができるなんて凄い。




