11-12 親子
11ー12 親子
俺が1人、闘技場を後にしようとしていると声をかけてきた奴がいた。
夏は過ぎたとはいえ、まだ暑いというのに黒いフードのついたマントを身に付けたその男は言った。
「私は、確か、クロ君にお願いしていた筈なんだがな。この試合で負けて欲しい、と」
「ああ?」
俺は、答えた。
「だから、クロは出場してないだろうが」
「君でも同じことだ。ネイジア・メリッサ・フォン・デルム・ガーランドいや、メリッサ・コンラッド」
魔導師団長は、俺を睨み付けた。
「ただですむとは思わないことだ。この私を敵にまわしたのだからな」
「あんたは」
俺は、溜め息をついた。
「こんなことをする以外に、もっと他にするべきことがあるんじゃないのか?グロウリー・ダリウス」
「なんだと?」
やつが身構えるのがわかったが、俺は、続けた。
「今、あんたがするべきことは、頑張った娘を抱き締めて健闘を称えてやることじゃないのか?」
「うるさい!」
魔導師団長が叫んだとき、背後で声がした。
「お父様?」
「ライザ!」
ライザは、俺と魔導師団長の姿を見ると一瞬で全てを悟った。
「お父様・・私が信じられなかったのですね・・」
ライザは、駆け出した。
俺は、気まずい思いを押し隠していた。
あの子、泣いてたぞ。
俺は、おろおろしているおっさんに言った。
「はやく追いかけた方がいい。じゃないと、もう、あんたの娘じゃなくなっちまうぞ」
俺にそう言われておっさんは、ライザの後を追って走り出した。
やれやれ。
俺は、吐息をついた。
手のかかる親子だな!
俺が闘技場から出ていくと先に試合が終わっていたらしいアレイアスがメイド姿で待っていた。
うん。
すごく、目立ってるな。
なんか、人だかりができてるし。
アレイアスは、そんなことには構わずに俺に言った。
「すいぶんとお優しいことだな、メリッサ」
「俺は、優しくなんてねぇし」
俺は、アレイアスの肩をポン、と小突いた。
「勝ったんだろうな?」
「誰に言っている?」
アレイアスは、ふふん、と笑った。
「もちろんだ」




