10-13 死者の救済
10ー13 死者の救済
俺は、体が強張り動けなくなるのを感じた。
アレイアスは、笑いながらラクアスに命じた。
「この女を地下牢へ連れていって、拘束しておけ、ラクアス」
「ぐぅっ・・」
ラクアスが苦しげな唸り声をあげてから立ち上がると、俺の腕を掴んだ。
俺は、叫んだ。
「アレイアス!異国の皇子よ、きけ!お前たちは、過ちを犯した。だが、その過ちを償う機会を与えてやる。俺の言うことをきけ!」
俺がそう命じるとアレイアスの表情が凍りついた。
「なんだと?」
アレイアスの手が奴の腰の短剣へと伸ばされ、それを抜き、自らの首もとへと切っ先を突きつけていた。
「なぜ・・私の体が・・自由がきかないだと?」
「それは、俺がお前に術をかけたからじゃないかな?」
俺は、ラクアスの手を振り払った。
「お前が俺を魂の隷属を使って使役しようとすれば、お前の体は、自ら命を絶とうとする」
「何?」
アレイアスは、自分自身の手に握られた短剣を喉元に突きつけられたままで、俺を睨み付けた。
「くっ・・殺せ!このメギツネめ!お前のいいようにされるぐらいならこのまま死んだ方がましだ!」
「やめろ、アレイスタ」
ファイズがアレイスタの腕を掴んで、短刀を取りあげた。
「我々の負けだ」
「何を言っている」
「アレイスタ!」
ファイズが声をあらげた。
「この期に及んで見苦しいぞ!アレイスタ皇子よ。この魔女は、俺たちに道を用意していると言っているんだ。まずは、話をきこうじゃないか」
「なら、話し合いの前にラクアスにかけた術を解け!」
俺が言うと、アレイアスは、ちっと舌打ちした。
「この魔女が!」
アレイスタがぶちぶち言いながらもラクアスにかけた術を解いた。
パチン、と弾けるような音がしてラクアスの首の首輪が外れて消えた。
「それじゃ、仕切り直そうじゃないか、異国の客人よ」
俺は、ソファに座り直すと、魅了の力を秘めた微笑みを浮かべた。
アレイアスが仏頂面で俺の前に腰かけたのを見て、俺は、言った。
「まず、お前たちの犯した罪の話をしようか。お前たちは、この城の罪もない人々をあまりにも多く殺した。その罪は、贖われなければならない。だがしかし!」
俺は、ふぅっと吐息をついた。
「お前たちがどんなに罰を受けようとも死した人々は戻らない。それは、理不尽過ぎないか?というわけで、お前たちの罪を問う前にここの死者たちの救済を行うことにする」
「救済、だと?どういうことだ?」
ファイズがきいたので、俺は、答えてやった。
「すぐに、わかるさ」




